ロート製薬の目指す“健康”に欠かせない『再生医療』

2016年11月28日

今、世界中で注目を集めている「再生医療」。2000年代以降、実用化に向けてさまざまな研究が重ねられています。ロート製薬では2013年、再生医療に取り組む「再生医療研究企画部」を新設。目薬やスキンケア分野で培ってきた高度な技術を活かし、最先端の研究に挑みはじめました。なぜ私たちが「再生医療」実現の道を探求するのか。この研究にかける思いをお伝えします。

多様な可能性を秘めた「脂肪由来幹細胞」とは

▲脂肪由来幹細胞

そもそも再生医療とは、組織や臓器が持っている組織の再生能力や修復力を利用し、機能できなくなった組織や臓器を回復させる医療のことです。中でもロート製薬が取り組んでいるのは、「脂肪由来幹細胞」を使った研究。人間の皮下脂肪組織に存在するもので、誰もが持っている細胞の一つです。

幹細胞には体内環境の異常を察知して、そこで起きている炎症反応などを抑える特性があることがわかっています。つまりこのような特性を持つ幹細胞を注射や点滴などで体内に投与すると、体の悪い部分を修復したり機能を回復してくれたり、もとの健康な機能を取り戻せる可能性があるのです。

さらにこの技術が優れているのは、応用範囲が非常に幅広い点にあります。今までの医療では治療が難しい病気や治療薬のない病気など、さまざまな分野に応用できる可能性を秘めた再生医療は、新たな医療の一つとして大いに注目を集めているのです。

限られた人だけではなく、より多くの人へ

▲研究に取り組む再生医療研究企画部のメンバー

これまで医療用医薬品を手がけてこなかったロート製薬が、今なぜ、再生医療に取り組むのか。それは、より多くの人の「トータルヘルスケア」を実現し、人々が元気で長生きできる社会を築きたいと思っているからにほかなりません。私たちは今までも、製薬会社という枠組みを超え、化粧品から食にいたるまで、「人々の健康と美」をキーワードとした事業を展開してきました。再生医療は、予防から医療まで必要なものを必要な人に届けるために欠かせない要素の一つだと考えています。

さらに、私たちが再生医療に取り組むうえで最も大切にしていることは、この新しい技術を、限られた人だけの特別なものにしないことです。これまで目薬やスキンケア製品など、幅広い年代の方々が日常的に使う商品を届けてきたロート製薬だからこそ、できるだけ早く、一人でも多くの人が先端医療を受けられる世の中にしたい――開発当初から、そうした強い思いを抱いていたのです。

そのため、ロート製薬の再生医療では、「幹細胞」の中でも、「他家細胞」の研究を早くから進めてきました。自分の細胞を用いる「自家細胞」とは異なり、「他家細胞」は必要なときにすぐに届けることができ、より多くの方に使ってもらえるメリットがあります。

こうして、「今までの医療の枠をこえて、多くの人を助ける」という大きなミッションのもと、ロート製薬では「再生医療」の研究を進めています。

目薬・スキンケア分野の技術を応用

再生医療への参入を強力に後押ししたのは、ロート製薬が長年の研究開発によって確立してきた二つの技術でした。
一つは、目薬の開発で蓄積されてきた「無菌製法」の技術。そしてもう一つは、化粧品・皮膚向け商品の開発で得た、細胞を扱う技術とノウハウです。医薬品グレードの品質を維持できる環境下で生きた幹細胞を培養していくためには、この二つの技術が欠かせません。
こうして、長年にわたって取り組んできた目薬や化粧品の研究成果を活かし、再生医療の研究が少しずつ進んでいきました。

▲無菌状態での実験風景

しかし従来の医薬品と違い、再生医療にはまだまだ未知の領域があるのが現状です。特に現在、私たちの前に立ちはだかっている課題は、幹細胞の品質の管理です。

例えばまったく同じ材料、同じレシピで料理を作っても、素人とプロのシェフで味が変わってしまうのと同じように、ほんの少しの違いで細胞の培養にバラつきが生じてしまうのです。“生きたヒトの細胞”そのものを扱うことの難しさ。それは世界的にみてもまだ解決方法が確立されていない部分でもあり、携わっているメンバーは今、そのハードルの高さを痛感しています。

その課題をクリアするため、研究チームでは他家細胞を培養するプロセスを数百にも及ぶ工程にわけ、それら一つひとつに対する検査の精度を高めることによって、品質を一定に保つ方法を取り入れています。また培養の再現性をより高め、さらなる品質を追求するためにプロセスの検討にも取り組んでいます。

再生医療自体がまだまだ新しい分野であるため、きっとこの先もさまざまな困難が待ち受けているでしょう。それでも、一日も早い実用化にむけ、今日も研究チームは試行錯誤を重ねているのです。

世の中の人を健康にするために

▲ロート製薬の再生医療研究から。スキンケアへ。

今、ロート製薬が目指しているのは、2020年までに再生医療向けの医薬品を開発すること。まずは肝臓が硬くなり肝機能が低下してしまう肝硬変や、重症心不全などに対する研究に全力で取り組んでいるところです。こういった研究技術の蓄積を通じて、化粧品分野ではスキンケアブランド「episteme(エピステーム®)」から、ステムサイエンスというシリーズが2015年に生まれました。将来的には、さまざまな疾患に対する医薬品開発だけなく、美容や食なども含めた「トータルヘルス」の実現、さらに予防医療に役立てることも視野に入れ、着実に準備を進めています。

現在取り組んでいる研究は、私たちにとっては小さな一歩にすぎません。なぜならロート製薬が目指すのは、病気の治療や予防のみにとどまらない、その先にある真の健康を実現することだからです。健康をサポートする方法の一つとして、私たちはこれからも再生医療の研究に尽力し続けます。


取材・文:大島悠+プレスラボ

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