石巻から世界に挑戦!石巻のノンアニマル・ノンアルコール食があふれる日を夢見て

2015年10月23日

宗教の壁を越えて、美味しい和食を「いただきます!」

2015年10月16日。
訪れる観光客の8割が外国人という浅草の雷門近くにある、セカイカフェ浅草店(東京都台東区)にて、ノンアニマル、ノンアルコール食の試食会が行われました。
このセカイカフェ浅草店は、ベジタリアン、イスラム教徒(以下、ムスリム)、アレルギーに配慮したカフェで、食事制限のある方でも楽しく食事ができるカフェです。
集まったのは、ムスリムの女子学生など、約20名。
そして、目の前に並ぶのは石巻の海の幸から生まれたノンアニマル・ノンアルコール食。
サバだしラーメン、牡蠣(かき)潮煮、海鮮おから餃子、イワシのすり身汁など、日本の和食ながら、ムスリムの方にも安心して食べていただける食事です。

次々と運ばれる食事を前に、楽しそうに、美味しそうに食べる皆さん。
「餃子のおかわり、ください!」
「イワシのすり身汁、おいしい~」
「たらこを食べるときには、白ご飯も一緒にほしいです。」

感想や率直な意見など、様々な声が集まります。

美味しい食事に会話も進みます

ムスリムの方からおかわりのご注文いただきました

最近は、外国人観光客が増加したこともあり、日本の食事で、「ハラル認定」を受けたノンアニマル、ノンアルコールでムスリムが食べられる食事があることを耳にすることも多くなってきました。

しかし、実際にムスリムに聞くと、ハラル認定の食事であっても、原材料のところは日本語で表記されており、何が入っているのかわからず、不安だから食べられない・・・という声も。たとえハラル認定がされていても、原材料が確認できるものしか口にしない人も多いそうです。

そんな中、石巻元気復興センターの皆さんは東日本大震災で失ってしまった売り上げを取り戻すべく、石巻の海の幸から豚、牛、鳥そしてアルコールを一切使用していない三陸の美味しさがつまった和食の開発に挑戦しました。ハラル認定を取得することを目指すのではなく、原料や調味料においても製造工程で動物系やアルコール系のものが使われていないか、3段階までさかのぼって追跡をし、その結果を情報開示。最終的に食べるかどうかはムスリム個人の判断によるところが非常に大きいものの、3段階までさかのぼっての追跡を行い、それを情報開示することで、ムスリムでも安心してお召し上がりいただけるノンアニマル、ノンアルコール食を開発。そして、今回、セカイカフェでムスリムの皆さんに向けた試食会が実現しました。

石巻元気復興センターは、宮城県石巻市に本拠地を置く水産加工会社が集まった団体です。
この団体に所属する会社の多くは東日本大震災で社屋が全て流されたり、社員が被災するなど、大きな被害を受けました。
震災直後に届いた、たくさんの支援に胸が熱くなる一方で、「誰かに支えてもらうばかりでは続かない。自分たちの足で立たないといけない。」と考えた会社同士が集まり、お互いに協力しあいながら、石巻の水産加工業の復活、地域の再興を目標に活動しています。

なお、この浅草セカイカフェで提供したノンアニマル・ノンアルコール食は2015年3月に宮城県仙台市で開かれた第3回国連防災世界会議でのレセプションパーティでも3品採用され、テーブルに並びました。参加したムスリムの皆さんにも、安心して日本の食事、石巻の美味しさを味わってもらうことができ、石巻元気復興センターの皆さんにとっても国際的な会議で商品が提供できた記念すべき日となりました。

第3回国連防災世界会議でのレセプションパーティで採用された3品

いわしのすり身汁

海鮮おから餃子

ノンオイル和風ドレッシング

この、石巻元気復興センターの皆さんと、ノンアニマル・ノンアルコール食を結びつけ、国連防災世界会議での食事提供やセカイカフェ浅草店での試食会を実現に導いたのがロート製薬 復興支援室(現:東北地域連携室)今村明子さん(写真一番右)です。



飛び込んだ先は、踏み入れたことのない世界

2013年6月。
希望していた復興支援室に配属されたロート製薬の今村さん。
配属された直後、当時の上司から言われた言葉は、
「今村が被災地に関わることで、これまでになかった新しい価値を生んでこい。ロートのためにじゃない。被災地のために、だ。」

街が復興を遂げるためには、震災で大きな被害を受けた地域や産業が元気になることが必要不可欠。
民間企業がともにチャレンジすることで地域や産業に新しい価値を生みだす。
ロート製薬の今までの事業領域にとらわれず、どんな分野であってもいい。それが、地域や産業が元気になるために必要なことであれば、それを仕事としてチャレンジすること。

自分で問題を探して、回答を見つけるという、果てしないけれど、ロート製薬らしいミッションが今村さんに与えられました。

配属されて間もない中、答えを見つけるために、手さぐりで岩手、宮城、福島を行脚して飛び込んで話を聞く日々。震災から2年以上経過した東北に何ができるんだろう・・・。
悶々と考えながら、石巻市にたどり着いた今村さん。飛び込みで会社や団体を訪問し、現在の経営や生活の状況について話を聞かせてもらいます。そんな中、石巻元気復興センターに所属するとある企業さんを訪問した際、「石巻の美味しい魚をもっと多くの人に食べてもらいたいんですよね。」という強い想いがこもった一言を聞き、その一言が心に引っかかり頭から離れませんでした。

今村さんはその後、石巻元気復興センターに所属する他の会社も訪問し、各社の悩みを聞いてまわります。今村さんが行脚していることが会社間で伝わり、中には、お役に立ちたいと言っているけれど、すぐに来なくなるんじゃないかな・・・、そんなことを考えた人もいました。
しかし、来る日も来る日も、石巻を訪れ、各社を回り続ける彼女。次第に、冷やかしで来ているのではないこと、また、本気で一緒にやりたいと思っていることがみんなの中にじわじわと浸透していきます。
今村さんは、そのころ、石巻元気復興センターに加盟する会社の皆さんが、誰かに頼るのではなく、自分たちで震災から立ち上がろうとする自助努力の魂に感銘を受け、何とかして皆さんの力になりたい、そんな想いが日に日に強くなっていったそうです。

各社訪問を終えた今村さんは、ある日、石巻元気復興センターの会議に飛び込み、各社の悩みを聞き、それにより考えた提案を伝えます。
「売り上げを取り戻すには、今までにないことにチャレンジしていくことが大事。お魚の加工品を新しい層に買ってもらうには、肉を食べることに制限のあるイスラム教徒の人に向けて、石巻の海の幸を活かしたノンアニマル・ノンアルコール食にチャレンジするというのはどうでしょうか?イスラム教徒は今後、人口が爆発的に増えると言われていますし、将来大きな受け皿になる可能性がある。なにより、石巻の美味しい海の幸は、イスラム教徒の方にも受け入れてもらえるはずです!」

・・・イスラム?ノンアニマル・ノンアルコール?チャンスはありそうだけど、どうやって取り組めばいいんだ?そもそも本当にやる価値あるのか・・・?
皆さんの頭の中は、疑問でいっぱいになります。

実は今村さんもイスラム教やその食事に精通しているわけではなく、また石巻元気復興センターの皆さんも、当時はイスラム教の食事について熟知しているわけではありませんでした。どちらにとっても、今まで取り組んだことのない分野。ですが、「3年後や5年後に被災企業への補助金が終了した時でも慌てないよう、強みである水産加工を活かした武器を今の段階で作っておくことが大事。ムスリムに向けたノンアニマル・ノンアルコールの日本食は世間的にも今はまだ普及が少ない。ノウハウもなく、取り組むハードルは高いが、だからこそ、今、チャレンジすることで、石巻発の日本食が世界に広がるチャンスかもしれない。」
不安材料はたくさんあるものの、震災で失った売り上げは、今までと同じやり方では取り戻せない。
その考えは両者合致し、石巻元気復興センターの皆さんと今村さんのノンアニマル・ノンアルコール食チャレンジの幕が上がりました。

今村さんは、東京からハラルの講師を呼び、勉強会実施したり、モスク(イスラム教徒の礼拝施設)で、実際にムスリムが食べている食事や食べたい日本食を調査し、それを皆さんにヒアリング結果として伝えたりなど、石巻の皆さんが欲しいであろう情報をあらゆるネットワークを駆使して収集します。

今村さんの情報や、勉強会の内容を踏まえて、各社、試作品づくりの日々。
しかし、苦戦が続きます。

なんせ、アルコール入りの味噌や醤油、ラードも不可という、美味しさのエッセンスとなっていたものは全て禁止。
まずは調味料からノンアニマル・ノンアルコールに作り直さなければなりません。
ですが、石巻元気復興センターは、各社それぞれの知恵を持ち寄れる場所。1社だけではくじけそうな場面でも、加盟社同志、相談し、連携することでハードルを一つ一つ乗り越えます。そして、苦戦のすえ、ようやく、ノンアニマル・ノンアルコール食品が完成しました。
加盟12社のうちの1社である、創業明治41年の(株)山形屋商店さん。その山形屋商店さんが開発したノンアニマル・ノンアルコールの調味料(出汁やだしつゆ)を使って商品を開発している会社も多く、石巻元気復興センターの強みである横の連携の象徴的な事例と言えます。(株)山形屋商店の山形政大店長は、こう言います。
「うちで開発した調味料(出汁やだしつゆ)が採用され、加盟社の間で新たなノンアニマル・ノンアルコール食が生まれている。他社商品誕生のきっかけになっていることが嬉しいです。」
ただ、保存料や添加物も全てチェックし、動物性のもの、アルコール類が一切使われていないものしか使用しないため、作り上げた出汁は保存料やアルコールを抜くことで保存期間が短くなり、早く使い切らなければならないなどの問題はあります。まだまだ課題は多く、更なる発展に向けてのチャレンジは続きます。



石巻元気復興センター×ロート=新しい付加価値の誕生

「最近では大手企業もハラル食品を開発・販売し、ムスリムの方に向けた日本食の需要は高まっています。だが、こちらは、1社では開発できないものを、加盟12社の横のつながりにより商品を生み出せる。地域ぐるみで商品をそろえられるのはわれわれの強みです。」石巻元気復興センター松本俊彦代表理事長の言葉です。

大手企業のノンアニマル・ノンアルコール食への参入の足音は、日に日に大きくなっています。
しかし、あの震災から立ち上がった石巻元気復興センターの皆さんは、横の連携だけではなく、あの日失った売り上げを取り戻そうという内に秘めた力強さがあります。

ロート製薬も、医食同源という言葉がある通り、ヒトの美と健康は体にいいものを食べるところから始まっていると考え、近年は薬膳料理を提供するレストランをオープンしたり、奈良県で循環型農業を行うなど、健康食事業に進出しています。石巻の皆さんが作り上げたノンアニマル・ノンアルコール食は、 “体にいいものを食べるところから健康が始まる”というロートの考えと合致し、ともに取り組みの歩みを進めることができました。

製薬会社であるロートと、石巻の水産加工会社。

一見すると、結びつくようには思えない両者ですが、これまで見たことのない世界にともにチャレンジすることで化学反応が起き、新しい付加価値が生まれたのです。

現在、石巻元気復興センターのノンアニマル・ノンアルコール食の一般販売はしていませんが、ムスリムではない人が食べても「おいしい!これ早く販売してくれませんか?」という声が上がるほど、期待値の高い商品として仕上がっていますので、なるべく早くお客様の声にお応えできるよう、現在、流通の整備を進めています。
期待が高まる石巻のノンアニマル・ノンアルコール食。石巻の美味しい魚、美味しい日本食が、宗教上食べ物に制限がある方でも安心して楽しめる。そんなことが世界中に浸透する日を夢見て、石巻元気復興センターとロート製薬のチャレンジは続きます。