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美容施術「IPL治療」による美白作用の新たなメカニズムを発見

研究開発

美容施術「IPL治療*1」による美白作用の新たなメカニズムを発見 IPL治療は肌色を決定する遺伝子発現に作用します 同様に、その美白メカニズムに関与する植物エキスを確認しました

2017年12月18日

ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:吉野俊昭)は、医療法人財団青輝会アオハルクリニック(東京都)との共同研究により、美容施術「IPL(Intense Pulsed Light)治療*1」が肌色を決定する遺伝子発現に作用することを見出しました。また、スクリーニングの結果、そのメカニズムに関与する植物エキスを確認しました。本研究成果は、2018年3月に行われる日本薬学会第138年会(金沢)にて発表予定です。引き続き共同研究を通して美容医療の作用機序解明に取り組むと同時に、新たな製品開発へ応用していきます。

*1:IPL(Intense Pulsed Light)治療:IPLとは、広帯域の波長(400nm-1200nm)を発振するフラッシュランプを指します。フィルターを用いて波長域を調整し、シミ、肝斑、赤ら顔、脱毛などの治療に用いられます。

研究の背景

当社はこれまでに最新の皮膚科学に基づいた基礎研究並びに化粧品開発を行ってきました。その中で今回着目したのが美容皮膚科医による美容施術です。美容皮膚科ではレーザーやIPLなどの光照射機器を用いて、エイジングによる皮膚症状に対して高い効果を示す治療を行っています。中でも特に波長560nm-1200nmのIPLは、シミ、くすみなどに対する美白効果が臨床レベルで高い有効性が確認されているにも関わらず、その美白メカニズムは明らかになっていませんでした。
そこで当社は2016年11月より医療法人財団青輝会アオハルクリニック(東京都港区六本木、院長:小柳衣吏子先生)と共同研究を開始し、美容施術のメカニズム解明に取り組みました。

IPL治療に着目した美白メカニズムの解析

今回、メラノサイト含有3次元培養皮膚モデルを用いて、実際の施術を再現し(図1)、メラニン産生に関する様々な遺伝子発現の変化を確認しました。これまでIPL治療による美白作用はメラニンを含む細胞の熱変性とターンオーバーの促進であると考えられておりましたが、本検討により、新たにメラノサイトに於いてメラニン合成に関わる遺伝子OCA2、SLC45A2の発現が低下していることを発見、更にOCA2とSLC45A2遺伝子の発現を抑制すると、有意にメラニン生合成が低下することが分かりました(図2)。OCA2並びにSLC45A2は、近年のヒトの見た目に関するゲノム関連解析により肌色の決定に寄与していることが明らかとなった遺伝子です(図3)。

試験方法
ヒトメラノーマ細胞を用いて細胞内メラニン含有量を定量した。OCA2並びにSLC45A2遺伝子発現はRNA干渉法にて抑制を行った。
(n=3, *P<0.05, **P<0.01 Dunnett's test)

IPL治療より発見されたメカニズムに則した素材スクリーニング

当社植物エキスライブラリーを用いて、スクリーニングを行ったところ、アーティチョークエキス並びにエイジツエキスにIPL治療と同様OCA2並びにSLC45A2の発現を抑制する効果を見出しました。

試験方法
正常ヒト成人表皮メラノサイトを2日間培養し、その後、各エキスサンプルを添加し、さらに24時間培養後、細胞を回収した。その後RNAを抽出し、逆転写反応によりRNAからcDNAを合成し、定量リアルタイムPCRにより、OCA2、SLC45A2の各遺伝子発現量を定量した。

考察

本検討によりIPL治療による美白作用の新たなメカニズムを見出しました。そのメカニズムに着目した素材を見出し、製品への応用を目指していきます。今回得られた新知見に関しては特許出願済です。また研究成果は2018年3月日本薬学会第138年会(金沢)にて発表予定です。
引き続き共同研究を通して、確かな臨床実績のある美容医療のメカニズム解明に取り組み、エイジングによる皮膚症状に対しエビデンスに基づいた新たな製品開発に努めていきます。