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脂肪組織由来間葉系幹細胞および真皮線維芽細胞における細胞外基質産生の検討

2015年12月1日 - 2015年12月4日:第38回分子生物学会年会・第88回生化学会大会合同大会(BMB2015)

脂肪組織由来間葉系幹細胞(AD-MSC)は、成人の生体より比較的容易かつ大量に採取でき、組織修復能力を有することから、再生医療分野および美容分野への応用が期待されている。また、組織の炎症・線維化抑制効果も示唆されており、線維化を伴う炎症性疾患や皮膚における線維化(傷痕やケロイド等)治療への活用に向け、研究開発が進められている。一方、AD-MSCにはコラーゲンを始め、様々な細胞外基質(ECM)産生能力があり、細胞の形態、遺伝子発現プロファイル等から、線維芽細胞との類似性が示されてきたが、両細胞の生み出すECMの種類・性質についての詳細な比較検討はなされてこなかった。

そこで我々は、様々なECM関連遺伝子の発現レベルをAD-MSCとヒト真皮線維芽細胞間で比較し、各細胞で発現している細胞外基質の種類、発現量の相違を明らかにした。また、両細胞で発現している因子について、機能面での違いがないか比較検討を行った。その結果、真皮においてハリの維持に不可欠とされるECMであるI型コラーゲンは、両細胞において遺伝子発現およびタンパク質産生が確認され、AD-MSCが産生するI型コラーゲンも線維芽細胞のものと同様にコラーゲン線維を形成することが明らかとなった。一方、線維化抑制能を併せ持つと考えられるAD-MSCではECM分解酵素の発現が高く、コラーゲン線維を作るだけではなく、過剰な線維化を抑制(分解)し、高品質な線維の再構築に寄与する可能性が示唆された。現在、ECM産生の観点から真皮線維芽細胞とAD-MSCの相互作用について検討を進めている。