【グローバルロート通信】〜ケニア前編〜

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2016年2月22日

美と健康の追求が人びとの明日を拓く……ケニアで叶える夢の続き

世界の現場からロート製薬の今と未来を伝える「グローバルロート通信」。初回は特別編として、ロート・メンソレータム・ケニア社の代表を務める阿子島文子(あこじまふみこ)さんをご紹介します。入社からわずか1年半でケニアに現地法人を立ち上げ、自ら代表を引き受けた彼女の思いに迫りました。

ボランティア活動で感じたジレンマからビジネスの道へ


−−なぜケニアに現地法人を立ち上げることになったのでしょうか?

話は少しさかのぼりますが、もともと大学時代から国際貢献に興味がありました。卒業後は製薬会社のMR(医療従事者を相手とした営業職)として就職しましたが、学生時代の思いをあきらめられずに退社。JICA(青年海外協力隊)のHIV対策隊員としてケニアで2年間ボランティア活動をしていました。

そこでは本当に貴重な体験をさせてもらいながらも、少しずつジレンマが出てきました。現地の人たちは、どこか「援助を受けること」が当たり前になってしまっていて、社会のボトムアップとなるような産業が生まれにくい状況があると感じたのです。一方で、首都のナイロビではアジア系の企業がアクティブにビジネスを進めており、「ボランティア」という形でサポートを続けていくことに限界を感じていました。そこで日本企業に転職し、海外事業を展開することで国際貢献ができるのではないかと思い、ロート製薬への入社を決めたのです。


−−ボランティア活動をしていた経験のなかで、ケニアにもビジネスチャンスがあると感じられたのですね。

いえ、実は正直なところ、はじめは難しいのではないかと考えていました。マーケット的には小規模ですし、国際援助頼りの社会構造になっているため、市場原理が機能せず、企業間の競争が起こりにくくなっています。そのため人件費も物価も高く、海外からの安価な輸入品には太刀打ちできません。また、産業としては小規模農家による農業が主体なので、小さなコミュニティをまとめて企業として成り立たせることは、文化的、気質的に難しいのではないかと思っていました。

−−それでもケニアに現地法人を作るモチベーションとなったのはなんだったのでしょうか。

ロート製薬に入って1年半でアフリカでの海外事業が承認されました。出張ベースで仕事を進めていましたが、実はケニアにこだわっていたわけではないんです。「アフリカで日本企業のビジネスをすることに意味がある」と考えたとき、東アフリカの玄関口として、国力的にも地理的にも中心にあるケニアに拠点を築くことが必要だと考えました。ただ、そこに自分自身が飛び込んで現地法人を経営していくということは、会社での経験が浅いこともあり、気負いや不安があったことも事実です。

けれどもそんなときに思い出したのが、ボランティア時代の経験。ちょっと青臭い話ですが、「幸せってなんだろう」と思ったんです。例えば、村でみんなと暮らしているときは幸せだったはずなのに、ナイロビという都会を見て帰ってきたあと、不幸な気持ちで暮らしている人もいる。幸せを感じる理由には「比較」という側面もあると思うのです。選択肢が増えるにつれて迷いが出てきて、比較対象より自分が劣っていると感じたときは、すごく不幸に感じてしまう。ただ都会のように橋や道を作ることが、果たしてそこに暮らす人びとの幸せにつながっているのだろうかと、迷うようになってしまいました。
けれどもロート製薬が提供している「美」と「健康」は、どの文化でもどの社会でも求めていること。現地の人びとのニーズを満たし、この二つの価値を提供していくことは、アフリカの人たちにとって「生きる力」になるはずだと、迷いなく思えたのです。


−−会社の理念と阿子島さんの思いが一致していたということですね。

そうですね。もちろん、「なにを美と思うか」、「なにを健康と思うか」は文化や社会によって違います。ですから日本における美や健康という意識を持ち込むというより、彼らのニーズに合わせたマーケティングが必要だと考え、法人設立の準備のためケニアへ出張する際はゲストハウスに泊まって、なるべく現地の人と交流するようにしていました。ボランティア時代に住んでいたのはヴィクトリア湖の近くにある小さな田舎町だったので、そこでの常識を都市部に持ち込んでもいけないな、と考えていたんです。

ケニアは日本と違って種族や地域性、所得階層によってまったく異なる常識が混在している文化なので、都会には都会の常識があります。ゲストハウスのキッチンを借りて、日本食をふるまいながら都会に住むケニア人の女の子たちと交流し、化粧品や医薬品に対する考え方やトレンドなどをリサーチしていました。するとみなさん美や健康に対して非常に意識が高いことがわかりました。そこで彼女たちの要望を満たすような商品を手の届く価格でお届けすることが、ロート製薬の使命だと確信したのです。

今は日本の企業がケニアでビジネスをすること自体にすごく意味があると思っているので、日本文化も積極的に取り入れています。ケニアでは日本の常識がまったく通用しないので、「5分遅れたら遅刻」「約束を守る」などといった当たりまえのことができるだけでも大きな信頼につながるのです。日本の常識を教えて、日本企業で働くことが彼らのキャリアにとってプラスになっていけばと思っていますね。

単身でケニアに飛び込み、現地法人の立ち上げから支え続けてきた阿子島さん。文化の違いがあるアフリカでのビジネス展開を軌道にのせることができたのは、「人びとの幸せのため『美』と『健康』を届ける」という強い意志があってこそ。
グローバル通信〜ケニア編〜の後半では、現地での生活のちがいや今後の展望などを伺います。

【グローバルロート通信】〜ケニア後編〜

文:大矢幸世+プレスラボ

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