難治性角膜感染症の原因であるアカントアメーバに対するソフトコンタクトレンズケア用品の有効性を研究

難治性角膜感染症の原因であるアカントアメーバに対するソフトコンタクトレンズ(以下、SCL)ケア用品の有効性を研究! 有効成分のポリヘキサメチレンビグアニドの分子量によって消毒効果が異なることと、タンパク・脂質汚れがポリヘキサメチレンビグアニドの消毒力を低下させることを確認 ~新しいケア用品の開発、SCL装用者に対する正しいレンズケアの啓発に取り組みます~

2016年9月6日

ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:吉野俊昭)は、植田喜一先生(ウエダ眼科、山口県下関市)と共同で、ソフトコンタクトレンズ(以下、SCL)のケア用品の有効成分として広く使われている「ポリヘキサメチレンビグアニド(以下、PHMB)」について研究を行い、PHMBの分子量がアカントアメーバ消毒効果に影響を与えることと、SCLに付着したタンパク・脂質汚れがアカントアメーバ消毒力を低下させることを明らかにしました。この結果は、消毒液にSCLを浸すだけではPHMBの消毒効果は完全ではなく、十分なこすり洗いとすすぎが大切であることを示すものです。
本研究の成果は第59回日本コンタクトレンズ学会総会(2016年7月2日~3日、東京都で開催)で発表しました。この知見をもとに新しいケア用品の開発と、SCL装用者に対する正しいレンズケアの啓発に取り組んでまいります。

研究の背景

アカントアメーバは自然界や水道水などに存在する原生生物で、運動・分裂増殖を行う活発状態の「栄養体」と休眠状態の「シスト」の二つの形態があります。アカントアメーバは薬剤で死滅させるのが難しく、特に「シスト」は薬剤抵抗性が高いことが知られています。そのため、アカントアメーバによる角膜感染症の薬剤治療は困難であり、最悪の場合は失明に至ります。SCLの使用に伴う角膜感染症を防ぐためには、消毒効果の高いケア用品を選択し、ケア用品を正しく使用する必要があります。
一方、SCLのケア用品の有効成分として汎用されているポリヘキサメチレンビグアニド(以下、PHMB)のは陽イオン性消毒成分であり、幅広い抗菌スペクトルを持つことが知られています。SCLケア用品に配合されているPHMBは低分子~高分子の広い分子量分布を持ちますが、アカントアメーバに対してPHMBの分子量の違いが及ぼす影響については分かっていません。そこで、分子量が異なるPHMBを使用してアカントアメーバに対する消毒効果を調べました。また、SCL表面に付着したタンパク・脂質汚れがPHMBの消毒効果に及ぼす影響も調べました。

分子量が異なるPHMBの消毒効果

方法

市販のPHMBを分子量によって低分子と高分子に分けました。アカントアメーバの栄養体とシストとを低分子と高分子のPHMB水溶液に接種し、8時間消毒後、残っているアカントアメーバの数をもとに消毒効果を判定しました。

結果

アカントアメーバの栄養体に対しては低分子と高分子のPHMBともに高い消毒効果を示しました。一方、シストに対してはいずれのPHMBも消毒力が低下したものの、低分子のPHMBは高分子のPHMBよりもシストに対して高い消毒効果を示しました。

汚れの存在下におけるPHMBの消毒効果

方法

実際のSCLの使用においてはタンパク・脂質汚れがSCL表面に付着するため、同様の状況を想定した条件で試験を行いました。低分子と高分子のPHMB水溶液にタンパク・脂質汚れを加えた後に、アカントアメーバの栄養体とシストを接種し、8時間消毒後、残っているアカントアメーバの数をもとに消毒効果を判定しました。

結果

アカントアメーバは栄養体、シストのいずれの形態においても、タンパク・脂質汚れの添加によって、低分子、高分子のPHMBの消毒力は著しく低下しました。

考察

アカントアメーバのシストに対しては高分子よりも低分子のPHMBの消毒力が高いことから、分子量によってPHMBの消毒効果に違いがあることが示されたため、この知見は新しいケア用品の開発に応用していきたいと考えております。
また、タンパク・脂質汚れを添加した条件ではPHMBのアカントアメーバ消毒力が著しく低下していることから、消毒液にSCLを浸すだけではPHMBの消毒効果は完全ではなく、十分なこすり洗いとすすぎが大切であるということが示されました。この知見をもとに今後もSCL装用者に対する正しいレンズケアの啓発に取り組んでまいります。