大気有害物質は種類によって皮膚への影響が異なることを発見

自動車排気ガス、都市大気粉塵(ふんじん)、黄砂、花粉などの大気有害物質の皮膚への影響 大気有害物質は種類によって皮膚への影響が異なることを発見 地域や環境に対応した適切なケアが重要!

2018年1月12日

ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:吉野俊昭)は、近年、世界中で問題となっている大気汚染に着目した研究を行い、大気有害物質が皮膚へ悪影響を与えるだけでなく、その種類によって影響が異なることを発見しました。地域や環境に適した新しいスキンケアの提案へとつながることが期待できます。本結果は、第24回国際化粧品技術者会連盟中間大会2017(IFSCC Conference 2017、2017年10月23日~25日、韓国)において発表しました。

研究の背景

産業の発達や環境の変化により、近年、PM2.5や排気ガス等の大気汚染が大きな社会問題となっており、健康被害に関する報告も増えてきています。一方、皮膚科領域においては、アトピー性皮膚炎をはじめとする皮膚への悪影響についての報告はありますが、様々な大気有害物質が存在する中で、各物質の皮膚への影響については、十分な研究がなされておらず、未だ不明な点が多い状況です。そこで、当社は様々な大気有害物質による皮膚への影響について明らかにし、各物質に対して適切なスキンケアを行うことが重要と位置付けて、研究に取り組んでまいりました。

大気有害物質について

大気有害物質とは、大気中に存在する有害な物質の総称でPM2.5や排気ガスなど様々な種類が存在しています。今回は、その中より、代表的な大気有害物質である、①自動車排気ガス、②都市大気粉塵(PM2.5等を含む)、③ゴビ黄砂(ゴビ砂漠周辺から発生する黄砂)、④肌に悪影響を及ぼすことが知られる「スギ花粉」の4つに着目し、研究を実施しました。

研究の成果

[結果1]すべての大気有害物質が皮膚の炎症を誘導する

4種すべての大気有害物質が皮膚において炎症を引き起こす因子インターロイキン8(IL-8)※1の産生を促進することを確認しました(図1)。

(試験方法)表皮角化細胞に大気有害物質を添加し、上清中の炎症因子量を測定した。

[結果2]「自動車排気ガス」と「都市大気粉塵」が皮膚の酸化ストレス性の炎症を誘導する

自動車排気ガスと都市大気粉塵が皮膚において酸化ストレスを誘導すること(図2-1)、また、酸化ストレスと関連する炎症を引き起こす因子インターロイキン1β(IL-1β)やマトリックスメタロプロテアーゼ(MMP1)※2の発現を上昇させること(図2-2)を確認しました。ゴビ黄砂とスギ花粉では反応が見られませんでした。

(試験方法)表皮角化細胞に大気有害物質を添加し、細胞内の酸化ストレス活性を測定した。

(試験方法)表皮角化細胞に大気有害物質を添加し、酸化ストレス性の炎症因子の遺伝子発現量を解析した。

[結果3]「黄砂」と「花粉」がかゆみ経路を活性化する

黄砂と花粉が皮膚において、かゆみやアトピー性皮膚炎の原因となる因子「インターロイキン33(IL-33)」※3の発現を上昇させることを初めて明らかとしました。自動車排気ガスと都市大気粉塵では反応が見られませんでした(図3)。

(試験方法)表皮角化細胞に大気有害物質を添加し、かゆみやアトピー性皮膚炎関連因子の遺伝子発現量を解析した。

[結果4]「自動車排気ガス」と「都市大気粉塵」はバリア機能を低下させる

「自動車排気ガス」と「都市大気粉塵」が細胞どうしの接着に重要なタイトジャンクション遺伝子のクローディン1(CLDN1)やオクルーディン(OCLN)※4の発現を低下させ(図4-1)、バリア形成を阻害することが明らかとなりました。「黄砂」と「花粉」に関してはバリア形成への影響は見られませんでした(図4-2)。

(試験方法)表皮角化細胞に大気有害物質を添加し、バリア機能に重要なタイトジャンクション遺伝子の発現量を解析した。

(試験方法)表皮角化細胞に大気有害物質を添加し、TER法※5により電気抵抗値を測定し、バリア機能を評価した。

考察

大気有害物質の種類によって皮膚への影響は異なる

今回の研究により、大気有害物質の種類によって皮膚への影響が異なることが明らかとなりました。また、「自動車排気ガス」と「都市大気粉塵」は酸化ストレスに伴う炎症やバリア機能の低下を誘導し、一方で「黄砂」や「花粉」はかゆみに関わるIL-33の発現を上昇させることが明らかとなりました。このことは、「自動車排気ガス」と「都市大気粉塵」は酸化ストレスに伴う炎症やバリア機能の低下を誘導することで、しわやしみ、敏感肌へつながる可能性を示唆するもので、「黄砂」や「花粉」はかゆみに関わるIL-33の発現を上昇させることで、かゆみやアトピーなどの増悪因子となりうることを示唆するものです(まとめ図)
大気有害物質は国や地域により影響が異なるため、本研究をさらに推し進めることで、エビデンスに基づいた地域や環境に適したスキンケアの提案が可能となります。

〈参考〉
  • (※1)インターロイキン8(IL-8):炎症時に産生される物質です。表皮から分泌されて炎症を引き起こすことが知られています。
  • (※2)インターロイキン1β(IL-1β)、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP1):炎症時に産生される物質です。酸化ストレスにより活性化されて、炎症を引き起こすことが知られています。
  • (※3)インターロイキン33(IL-33):炎症時に産生される物質です。かゆみやアトピーの原因となることが知られています。
  • (※4)クローディン1(CLDN1)、オクルーディン(OCLN):細胞どおしの接着に重要な中心的なタンパク質であり、発現が低下することで皮膚のバリア機能が低下することが知られています。
  • (※5)TER法(Transepithelial electric resistance):皮膚のバリア機能を測定する方法として用いられています。電気抵抗値が大きいほどバリア機能が高いことを示しています。