「想い」が品質につながるから
人と技術が融合した
「進化する工場」をつくりたい
Keywords:スマート工場, 人と技術の融合
私たちの主力である製品づくり。時代にあわせて良質な製品を提供し続けることがWell-beingな社会を実現する一つになると考えています。とはいえ、機械任せでただ効率よく大量生産すれば良いというわけではありません。
「まず人がいて、人が輝いてこそ企業が生きる」。
私たちが創業当時から大切にしている“人”を中心とした経営は、生産工場においても同じです。
三重県伊賀市にある「上野テクノセンター」では“進化する工場”を掲げ、設備だけでなく、そこで働く人々も、日々挑戦を続けています。
固城 浩幸 -生産技術部
国際基準を満たす
高品質であるために
「自動化」への挑戦
私たちロート製薬は、1899年の「胃活」から始まり、時代のニーズに合わせて、目薬やスキンケア製品、機能性食品など、常に新しい分野に挑戦し続け、事業を拡大してきました。一方で、製造業を取り巻く環境も、絶え間なく変化し続けています。1960年代には、アメリカで誕生したGMP(Good Manufacturing Practice)と呼ばれる製造管理、品質管理の考え方が世界に広まり、各国で法制化が進められました。
ロート社内における製造品目や必要生産数量の増加と共に、時代の波に対応すべく、1999年に新たな生産拠点として竣工したのが「上野テクノセンター」です。変化するグローバル水準に都度対応し、働く人の力を活かす“進化する工場”を目指し、これまでにない新たなチャレンジが始まりました。
最初に建設したA棟では、点眼剤を生産しています。欧米の厳しいGMPに適応した無菌環境を実現するため、いち早く自動化が進められました。菌の主な発生源は、「ヒト」。生産工程になるべく人を介入させないことが、より高品質な製品の製造に不可欠だったのです。その後のラベルシール貼り、パッキング、外箱詰めといった包装のラインも自動化され、高い品質基準をクリアしただけでなく、大量生産も実現しました。
さらにそれらの設備は一部内製化をしています。目薬の生産ラインに適した検査機器は生産技術部のメンバーが開発・設計・制作・導入を行い、現在は改良を重ねながら使用しています。目薬の種類が多岐にわたるなか、細かい調整も容易にでき、日々自動化への進化をサポートしています。
自社設計だからこそできた
ロート製薬に見合った
人と技術の融合点
その後竣工したB棟では、主にスキンケア製品を生産しています。アイテム数が多く、容器の形状や包装の仕様もさまざま。売上状況を踏まえた生産数量も日々変化するため、A棟のような完全自動化システムではうまくいきません。製品の中身をつくる工程では、社員が一つひとつの原料を測り、決められた手順通りに釜に投入するなど、人の手が必要な工程も多くあります。そこでB棟は、自動化と人の役割を明確にしながら、自社で設計を行いました。
A棟で培った経験を活かし、常識にとらわれない新しい生産設備を導入。例えば、調合釜にはドイツ製の乳化装置を採用しました。洗い残しが少なく効率の良い自動洗浄方式は画期的で、それまで調製が困難だった製剤にも対応できるように。当時日本ではほとんど採用実績がなく、異例の判断と言われましたが、現在でもスキンケア製剤の生産を大きく支えています。
また、原料を測って用意する「秤量室」と、製品の中身を作る「調製室」の配置にも工夫しました。それまでは1つの秤量室に対して1つの調整室が設けられるのが一般的でしたが、かなりの品目数を生産するには、スペースと人の稼働に限界があります。そこで、1つの秤量室に対して、複数の調製室が稼働できるよう、秤量室を中央に配置。フレキシブルな秤量を行うことができるようになり、現在の多品種中量生産を可能にしました。
人の気づきから生まれる
「改鮮」こそ
進化の種
私たちが目指す“進化する工場”は、新しい設備で効率よく生産することだけが目的ではありません。大切なのは、そこで働く「人」の存在。優れた設備を活かし、工場を動かすのは、「人の力」なのです。ロート製薬では、工場のさらなる飛躍をかけて「人」が育つ職場づくりへの挑戦も行っています。
2005年には、人づくりのリーダー育成を目的とした「改鮮隊」プロジェクトを発足。このプロジェクト名には、より良い未来の工場をつくるために、日々新鮮な気持ちで改善に取り組むという強い意志が込められています。まず取り組んだのは、改善の基本とも言える5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の徹底。工場内で働く人が自ら環境を整備することで、問題が視えるようになり、改善にとりくむ風土が生まれます。さらに、問題に気づく眼を養う「気づきシート」を導入。新人、ベテラン関係なく、どんな小さなことでも問題として捉え、それに対してどういう対策をしたかが一目でわかるように「視える化」することを毎週実施しています。
こうした取り組みは、最初はなかなか浸透しませんでしたが、それまで実施されていなかったチームミーティングをこまめに行い、メンバーからあがった提案は、設備調整員を中心に必ず対策を行いました。そうすることで、どんなに小さな「気づき」も放置されないという信頼感が生まれ、「全員参加の気づき提案」の気運を醸成。その後のアンケートでは、「あなたの職場は改鮮活動により変わりましたか?」の問いに対し、94%が「変わった」と回答しました。
また、「5S」、「気づき」と並んで改鮮活動の柱の1つとなったのが、「テーマ活動」の実施です。半期にわたって取り組んだ改鮮活動の成果を、各チームの代表が発表する「改鮮発表会」を開催。これによって他のチームの活動内容や頑張りを知ることができ、刺激を感じて高め合う、チーム間での相乗効果も生まれていきました。個人の成長はチームの成長につながり、工場全体の進化へとつながっていくのです。
テクノロジーで変わるのは
効率ではなく、「想い」を
乗せるための余白
製造品目や製造量は年々増加しながら、医薬品の国際的な製造規制も厳しくなる一方です。そこで、2022年9月に完成したC棟は、国際的な品質基準であるPIC/S GMPに対応した品質保証体制はもちろん、変化する医薬品の規制に中長期的に対応することを目指して設計されました。
コンセプトは「人と環境にやさしいスマート工場」。AIやI・IoT(Industrial Internet of Things:製造業のモノのインターネット)を活用し、より高品質な製品を安全に生産できる仕組みづくりに取り組んでいます。その象徴となるのが「サイバーフィジカルシステム(CPS)」です。IoTやセンサー技術を通じて、工場内の人の動きや機器の移動動線、作業負荷の情報をサイバー空間で解析。AIやディープラーニングによって最適な生産プロセスが提案され、実際の現場環境に活用することで、生産性が向上することが期待されています。また、肉体負荷をシミュレーションし、誤差なく行いたい作業や負荷の大きい運搬作業には協業ロボットを導入。反面、薬剤や化粧品の調製といった、人で対応するほうが効率的な仕事は、現時点で人の手に委ねられるなど、人とロボット、それぞれの強みを活かすライン構築を行っています。
こういった取り組みは、単に効率化だけを目指したものではありません。先端テクノロジーの導入は、働く人の負担を軽減し、より良い製品づくりについて考え、自ら行動する、新しい働き方につながっていきます。例えば、CPSの高度なシミュレーションによって、作業フローの的確なアドバイスが可能になると、作業を行う人の負担が軽減され、安全・安心な環境が生まれます。一人ひとりがより良い製品づくりについて考え、自ら行動する“意志をもった仕事”ができるようになれば、さらに強固な製品づくり体制の確率へとつながっていくのです。
製品と一番長く向き合えるのが生産の現場
その誇りを更に
高めていきたい
今後の製品づくりの現場では、人の目や経験でも捉えきれなかった細かな課題を探り出し、生産プロセス全体を見通した解決策が必要となります。こうした改善のためには、人は人・機械は機械という分業状態ではなく、これまで以上に人と技術が融合していくことが重要です。その鍵となるのが現在のCPSであり、例えばウェアブルデバイスがもっと進化すれば、さらに人と機械が一体化する施策が生まれる可能性もあるでしょう。
しかし、どんなにテクノロジーが進化したとしても、私たちの製品づくりの基本は変わりません。料理人は、自分が楽しまないと美味しいメニューは提供できないと言います。生産に携わる技術者もこれと同じ。人の想いや熱量こそが品質へとつながるものだと信じています。
品質をつくるのも、想いを込められるのも、生産の現場でしかできません。工場で働く人たちがワクワクしながら生産活動に取り組めば、ロート製薬の製品づくりがさらに活性化していきます。日本の製造業を、私たちから盛り上げたい。そして、世界に発信したい。目指すべき目標を胸に、私自身がさらに熱量を上げて取り組んでいきたいと考えています。
企業は何のためにあるのだろうか?
希望ある未来につなげるために、ロート製薬が目指す企業の姿とは? 代表取締役会長の山田邦雄が想いを語ります。
Keywords:社会の公器, 未来の社会
社員の健康から社会の健康へ
一人ひとりの小さな取り組みをつなげていきたい
一人ひとりが自らの健康を考え、習慣化する「きっかけづくり」がロート製薬の健康経営のキーワード。その数々の取り組みをご紹介します。
Keywords:健康人財, きっかけづくり
国ごとに異なるお客様のニーズにAllロートグループで応えていきたい
世界中に貢献するために、一人ひとりが各国に寄り添い取り組んでいます。
Keywords:現地に根づく, グループ間連携