地域に息づく農産物を全国へ、『Jiyona』プロジェクトの挑戦

2017年12月12日

2017年11月9日、ロート製薬は新たなチャレンジとして、野菜と穀物の新・糀発酵飲料『Jiyona(ジヨナ)』を発売しました。開発を手がけたのは、広報・CSV推進部。CSVとは「価値共創」を意味し、社会との関わりの中で、多くの人と共有できる価値を創造していく取り組みのことです。今回、それを体現するものとして、地方の食文化を見直し、新たな商品づくりにつなげました。プロジェクトに関わった方々の言葉から、その背景と思いを探ります。

地方の食材を活用した健康作りを

ロート製薬は製薬会社として、お客さまの健康を真剣に考えるなかで、健康なままで健やかな暮らしを追求すること――つまり「薬に頼らない健康作り」もまた、私たちが果たすべき重要な役割なのではないかと考えるようになりました。日々の暮らしの中で健康を支えるものの一つが「食」。毎日食べる食事から栄養バランスを整え、体の中から健康になれば、いきいきと充実した日常を送ることができます。

とはいえ、多忙な日々を送る現代人は、食事も不規則になりがち。「朝ごはんを食べられない」「飲み会続きで栄養が偏っている」など、多くの人にとって理想的な食生活とはほど遠いのが現状です。
ロート製薬は栄養が不足しがちな現代人の食生活に着目し、忙しいときでも簡単に取れる新たなドリンクを開発することにしました。それが、今回発売された新・糀発酵飲料『Jiyona』です。

『Jiyona』とは、「滋養(Jiyo)+natural(na)」を組み合わせた造語で、「そのままの栄養」という意味が込められています。商品開発に取り組んだのは、なんと広報・CSV推進部。市販されている商品の場合、通常は商品企画部門などが中心となって企画開発が行われるため、ロート製薬としては初の試みとなります。

「2011年の東日本大震災以降、ロート製薬では東北の皆さまとともに活動を行ってきました。地元の方々と接するうち、そこに脈々と受け継がれてきた食文化に注目するようになったのです。他の地域にも目を向けてみると、実に豊かで多様な食材や料理があることに気づきました」。
そう話すのは、広報・CSV推進部の内木桂(ないき かつら)。今回のプロジェクトを中心となって進めてきました。

▲ロート製薬株式会社広報・CSV推進部の内木桂(ないき かつら)

「日本は世界にも誇れる長寿大国。その理由の一つに、地域で育まれてきた食文化が関連しているのではないかと考えました。ロート製薬として、『薬に頼らない健康作り』を模索する中、地方の食材を活用し、新たな商品開発に取り組むことにしたのです」(内木)

日本の食材の中でもロートが注目したのは「麹菌(こうじきん)」。醤油、味噌、みりん、酢、日本酒、甘酒、漬物など、実にさまざまなものが、麹菌の持つ「発酵」「酵素」の力によって作られています。日本の「国菌」にも認定されている糀をもとに、手軽に栄養を摂れる「新たな糀発酵飲料」を作るべく、プロジェクトがスタートしたのです。

門外不出、種子島に伝わる「幻の紫芋」

日本各地には、その地方でしか栽培されていない農作物が数多く存在しています。そのほとんどは地元で消費され、全国に広く出回ることはそう多くありません。今回のプロジェクトにあたって、糀と組み合わせるさまざまな野菜が検討されました。その土地にしかないもので、栄養価も高く、健康な暮らしを後押ししてくれるような野菜を……。そうして記念すべき第1弾として選ばれたのが鹿児島の「紫芋」。中でも、種子島のとある地区でしか栽培していない在来種、「一吉紫芋(いちきちむらさきいも)」という希少な紫芋に出会ったのです。

鹿児島市内から南へ約115kmの沖合に浮かぶ種子島は、蜜をたたえるほど甘味の豊かな「安納芋」をはじめ、さまざまな種類のサツマイモの産地として知られています。そこで育まれてきた在来種、「一吉紫芋(いちきちむらさきいも)」を大切に守ってきたのが、鹿児島・屋久島で107年の歴史を誇る老舗菓子製造「馬場製菓」三代目会長の馬場甚史朗(ばば じんしろう)さんです。

「かつて、種子島にある在来種のサツマイモには特に品種名もなく、家族に食べさせるため細々と栽培が続けられていました。しかし今から30年前、アリモドキゾウムシ・イモゾウムシなどの虫害によって全滅の危機に瀕したのです。一吉紫芋もそのうちの一つでした。なんとかこの紫芋の種を守りたいと思い、私の父の名にちなんで『一吉紫芋』と名づけ、継続的に栽培することにしました」(馬場)

▲馬場製菓三代目会長の馬場甚史朗(ばば じんしろう)氏

一吉紫芋の特色は、なんといってもその色鮮やかさ。在来種だからこそ、その風味や味わいは力強く、ポリフェノールの一種であるアントシアニンなどの栄養素が含まれています。一吉紫芋は1988年から作られている馬場製菓の銘菓『薩摩きんつば』のためだけに栽培され、これまでその他に出回ることはありませんでした。

いわば「門外不出」の一吉紫芋を、ロート製薬の新商品開発に――。その申し出は、あまりに意外だったと馬場さんは振り返ります。

「まさか、『あの』ロート製薬さんが?というのが正直な気持ちでした。けれどもうちの本社がある屋久島に山田会長がわざわざお越しくださって……『これは本気だ』と感じ入りました。それなら、私たちも本気を見せなくては、と。薩摩きんつばで使っている一吉紫芋をそのまま活かして一次加工した製品を、ロート製薬さんに提供することにしたのです」(馬場)

一吉紫芋と白糀を合わせた新感覚の糀発酵飲料が誕生

鹿児島の一吉紫芋を使うからには、糀も鹿児島で親しまれているものを使いたい。そう考えたロート製薬が次にアプローチしたのは、焼酎メーカーの「薩摩酒造」でした。全国的に人気のある芋焼酎「さつま白波」をご存じの方は多いのではないでしょうか。焼酎の醸造には「黒糀」「黄糀」「白糀」などさまざまな種類の糀が使われますが、特に白糀は鹿児島に縁のある糀。黒糀の突然変異として1924年に鹿児島で発見された麹菌なのです。
「ロート製薬の品質管理のノウハウと薩摩酒造さんの持つ醸造技術を活用し、一吉紫芋と白糀を合わせた甘酒を作っていただけないか、と『Jiyona』の共同開発を持ちかけました」(内木)

「白糀を仕込みに使うと、焼酎本来の甘みがしっかりした芋焼酎に仕上がります。また、麹菌がクエン酸を作るので、温暖な気候でも雑菌の増殖を抑えることから、鹿児島の焼酎醸造に広く使われてきました」と話すのは、薩摩酒造 開発研究部 研究所 研究主任の百田農(ももだ みのり)さんです。
研究開発には長けた百田さんでも、「白糀を使って発酵飲料を作る」という発想は考えつかなかったと語ります。

▲薩摩酒造 開発研究部 研究所 研究主任の百田農(ももだ みのり)氏

「通常、甘酒は黄糀を使って作りますが、白糀にはクエン酸が含まれるため、酸っぱくなってしまうのではないかと思ったのです。紫芋と米に含まれる炭水化物から甘さを引き出しながら、どこまで酸味を持たせるか。そのバランスを取るのが非常に難しいと感じました。けれどもこのクエン酸があるからこそ、添加物などに頼ることなく、紫芋・米・米糀というシンプルな材料で美味しい飲み物を作ることができるんです。クエン酸には雑菌の増殖を抑制する効果がありますからね。まさに『白糀の力』を感じました。私の好きな言葉でもある、音楽家フルトヴェングラーの『すべて偉大なものは単純である』という言葉がぴったり当てはまった気がします」(百田)

鹿児島・枕崎にある薩摩酒造「花渡川蒸溜所明治蔵」では、古来より続く甕(かめ)仕込みの製法が続けられてきました。『Jiyona』も、この「花渡川蒸溜所明治蔵」にて開発されたもの。

「通常、米糀と蒸した芋を合わせて仕込みを行う際、20℃後半くらいの温度でゆっくりと発酵させていきます。それを60℃にまで上げて、米糀の酵素の力を最大限まで引き出すんです。非常に『過酷な造り』ともいえるのですが、一吉紫芋はまったく退色せず、鮮やかなまま。アントシアニンなどの栄養素もほとんど変化がありませんでした。在来種が持つその力強さに、助けられたような気がします」(百田)

「地元食材と糀のチカラ」を現代人へ届ける

こうして出来上がった『Jiyona 紫芋×米糀』は、紫芋特有の華やかな香りと豊かな甘みに、白糀によるクエン酸の甘酸っぱさが加わり、さわやかなのに飲みごたえのある「新・糀発酵飲料」となりました。

「色合いも相まって、とてもかわいらしいですよね。甘さと酸味のバランスもほどよく、健康にも良い。焼酎とは縁遠かった女性の方にも、自信を持ってオススメできるものになりました」と百田さん。「私自身、一吉紫芋には特段の思い入れがあります。これまでも本当に良いお菓子を作ってきた自負もありますが、今回この一吉紫芋で、世界に羽ばたける商品開発ができたと確信しています」と馬場さんも語気を強めます。

「本当にいろんなご縁をいただいて、今回のプロジェクトを世の中へ届けられるようになりました。何もわからない中、皆さんが手を差し出してくださって、人から人へと思いをつないでくださったんです。感謝の一言では言い表せないほどですが、これから多くの方に『Jiyona』を手にとってもらうことで、少しでもその思いを形にしていきたいです」(内木)

ロート製薬はこれから日本各地をめぐり、その土地土地で培われてきた野菜や穀物を見つめなおしていきます。そして「地元食材と糀のチカラ」を身体にプラスする『Jiyona』を皆さまの暮らしに届けていきたいと考えています。


取材・文:大矢幸世+プレスラボ

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