ロートジー×ドラゴンクエスト コラボ目薬 紆余曲折3年間の舞台裏に迫る

2017年8月28日

圧倒的な清涼感から特に若年層から高い支持を受け、ロート製薬の目薬人気を牽引する存在だった「ロートジー」は、今年で発売30周年を迎えました。ところが、最近では「若者の目薬離れ」の傾向もあり、「若者にどうやって目薬を使ってもらうか」がロートジーのマーケティング課題でした。その状況を打破するべく満を持して発売に至ったロートジーとドラゴンクエストのコラボ目薬「スライム目薬」は、どのようにして生み出されたのか。ロート製薬だけでは実現できなかった、ロート製薬とスクウェア・エニックス協業の裏側に迫ります。

3年もの歳月をかけた「ドラゴンクエスト」コラボのはじまり

▲左から「ロートジー®b」・第2類医薬品・目の疲れ、目のかゆみに/「ロートジー®コンタクトa」・第3類医薬品・目の疲れ、ソフトコンタクトレンズまたはハードコンタクトレンズを装着しているときの不快感に/「ロートジー®プロc」・第2類医薬品・目の疲れ、目のかゆみに

ロートジーが若者から高い人気を得ていた時代といまを比べると、リフレッシュグッズの多様化が進みました。ひとえに清涼感を得るといっても、いまではミント系の清涼菓子やフェイスペーパーなどが充実しているため、そのなかで目が疲れたときに目薬を選ぶというユーザーは実は年々減ってしまっています。若者(10~30代)で見るとその流れは顕著で、いまでは目薬を使う若者は全体の3割ほどです。一方で「目の疲れ実感」そのものはスマホやPC、タブレット使い等の環境変化で増えています。目薬が生活の中で選択肢にはいっていない、そういう状況でした。

そもそも目薬は友人知人の間で会話をするアイテムでもない。TVCMで見て買うといったものでもなくなってきているかもしれない。情報があふれ、代替品があふれてきた今の時代の中で、目薬を自分事してもらうには。目薬について友人知人や周囲で話題にしてもらうには。目の疲れは感じているものの大多数の目薬を日常的に使っていない方に目薬を手にとってもらう動機、そこで担当者が思いついたのが強力なファンがいるコンテンツとのコラボ商品。

以前、発売した「デジアイ」では、スマホの普及により関心が広がっていたブルーライトなどによる疲れ目(または目の疲れ)に効果が期待できるとしてキャラクターとコラボレーションし、いままでリーチすることができなかった層にまで手にとってもらいながら、商品の機能も伝えることができました。そのときの“ファンベース”の仕掛け方の成功体験をもとに、若者に関心を持ってもらえるコンテンツを考えたときにまっさきに浮かんだのが国民的人気を誇るロールプレイングゲーム「ドラゴンクエスト」でした。

しかしスライム目薬の完成までには、ここから実に3年もの歳月をかけることになります。

「なぜドラゴンクエストと目薬なのか」大事なのはコラボの必然性

ロート製薬がスクウェア・エニックス(以下SQEX)へ初めに提案したのは、ロートジーの効能をドラゴンクエストに登場する「呪文」で伝えるというもの。「ホイミ」や「マヒャド」「ベホマ」などのドラゴンクエストおなじみの呪文によって、目薬の特徴や価値を伝えることができれば、ファンの方には「目の疲れには目薬です」と伝えるよりも伝わるのではという考えがありました。

実際に、SQEXに提案を持ちかけた時、反応自体は悪くなかったのですが、SQEXが重視したのは「ストーリー」でした。

「まず第一に、ドラゴンクエストを支えてくれているファンの人たちが喜ぶような新しさや驚きのあるコラボ企画にしたい」

徹底的にファン目線を考えるSQEXの熱意がここにありました。

このストーリーを巡り、ロート製薬とSQEX双方で議論して生まれたのが「かいしんの一滴」というキャッチコピー。

▲印象的なキャッチコピーはCMなどで使われている(画像:ドラゴンクエスト×ロートジー特設サイトより)

ドラゴンクエストのゲーム内では、戦闘中にときおり「会心の一撃」という通常より攻撃力が高い攻撃が決まることがあります。今回のキャッチコピーは、その攻撃になぞらえたもの。

ゲーム内では序盤に登場する人気モンスターである「スライム」が目薬になって放つ「会心の一撃」、それがロートジーの高い気持ちいい清涼感というコンセプトでした。

社内初の試みとなる容器の新開発

▲紙箱でもドラゴンクエストの世界観を表現している

コラボのストーリーを伝えるのに、特に象徴的な役割を果たしたのが「スライム型の容器」と「ドラゴンクエストの世界観を表現したパッケージ類」です。

実はこれが今回の企画で一番担当者の頭を悩ませた部分。

これまでロートジーでは、その時代時代にあわせて若者に受け入れてもらえるかっこいい容器の形を追求してきました。「ロート社内の既存の容器の形を生かしてどう提案できるか」を企画当初は考えていました。当初は、容器の中で戦闘画面を表現し呪文を唱えるといったデザインを考えていましたが、SQEX側から「ファンの方にとっての驚き・新しさの観点で今の案では十分ではない。もっと大胆なアプローチがほしい。」という指摘を受けました。ついで既存容器の範囲でスライムを再現しようとしましたが、「スライムにはスライムの形があります。既存容器で表現しても、おそらくファンの人たちの心には響かないでしょう。」というものでした。SQEXと議論をする中で、「一層のこと徹底的にスライムの形にできないか」というアイデアをもらえました。

よりスライムの形に近づけるためには、従来のロートジーの形である四角ではなく、もっと丸みのある型にしなければなりません。しかし容器の型をイチから作るには、専用の金型を起こし、必要なパーツの確認や今の工場で作れるのか、という確認など、とてつもない労力と費用がかかるもの。特に実際に工場で生産できるかどうかの検討は、慎重に時間をかけて行われたのです。

タイアップ専用として、医薬品で「容器そのもの」まで新規で制作するのは、実はロート製薬としては初の試み。社内での承認を得るまでのプロセスは決して平坦なものではありませんでしたが、熱意ある担当者が粘り強く交渉を続けたことで、実現へと進みます。

SQEXとの協業と試行錯誤の末に完成した再現性の高いスライム型容器

▲最初に提案した呪文活用ver(左)から完成形(右)までの遷移

スライム型の容器の新規開発というチャレンジに加えて課題だったのは、「ドラゴンクエストを支えてくれているファンの方々のためにも忠実性の高いスライムの型を求める」SQEXの思いと「実際の使用者のことを考え“医薬品”としての機能性を損なうわけにはいかない」ロート製薬の製薬会社としての思いをぶつけ合っての開発。ただスライムの形に作るだけではなく、医薬品としての機能性を両立した使いやすい目薬にしなければなりません。どちらも妥協できない以上、納得するまで検討を重ねることになりました。

専用の型で作り上げた試作型は、だいぶスライムの形に近づいてきましたが、問題は目薬のキャップ部分。試作型の段階では、スライムに近しい形にはなりましたが、まだキャップ部分が太い。

「キャップを外した状態では、スライムに近しい形だと考えたのですが、SQEX側からの『キャップを閉めた状態でスライムに見えるようにしたい。すべてはファンに楽しんでもらうため』というアドバイスに応えるために、さらに作りこむ必要がありました」(開発担当者)

しかし、キャップを細くするうえで一つの問題が。細くしすぎてしまうと、使用者がキャップを開けにくくなってしまいます。いくらスライムの形を再現できても使いにくい目薬になっては本末転倒。再度、調整案を考えることに。

担当者が頭を悩ませた結果、「力がかかりやすいように、キャップにくぼみをつけて指がひっかかるように調整する」ことでキャップを細くすることに成功しました。容器の絶妙な厚さも、適切な力で薬液を点眼できる使い勝手を考慮してのもの。

▲生産担当者の尽力により、発売にたどり着いたスライム目薬

SQEXのアドバイスを受けながら重心を落としてよりスライムの形に近づけたり、容器に使用している樹脂の色を調整したり、容器の持ちやすさや押しやすさなど目薬としての使いやすさも考慮したりと、細かい調整は続きます。
発売日が迫るなか、生産ラインを通る目薬一つ一つを確認する中で発見したノズルの傷。それまでに通った目薬全ての確認と原因と解決策の検討にはそこに関わる全ての人が夜遅くまで向き合い対応を行いました。
お客様が楽しみに待ってくれているという現状もあったので、精一杯の中での検討で、その甲斐あって、無事スライム目薬が生産ラインを流れてきたときには、ワーッと歓声が上がったほど。そして、ようやく発売へと至ったのです。

想像を超えた大ヒット、増産とこれからについて

▲発売開始から間もなく、SNS上にはスライム目薬の写真が多数投稿された

発売後はSNSを中心に想定以上の反響がありました。

「特に、女性ファンからの『かわいい』という声を大きくいただきました」(開発担当者)

SNSでの反応に加え、ロート製薬にも「スライム目薬を見つけられなかった」というお問い合わせの声をたくさんいただき、その声に応えることへSQEXの理解も得られたことが、増産決定を後押し。8月17日の再販売の決定を知ったお客さまからは、発表後に「今度こそ買いたい」といった声をいただきました。

スライム目薬の購入者の約2割強は、いままで目薬を使用したことがない方。ドラゴンクエストの“ファン”をベースとして目薬なるものに興味をもってもらい話題化につながった「スライム目薬」。企画担当者もまさにドラゴンクエスト世代の社員だが、何より新しい価値や驚きの提案にこだわるロート製薬とSQEX双方が、大切なお客さまのために信念をかけて本気でぶつかりあったからこそ生まれた「会心の一撃」になりました。

「今後も今回のコラボのように時代に合わせた新しいユニークな提案をして、みなさんを『おっ』と思わせていきたいです」。


ロートジー URL http://jp.rohto.com/zi/


文:早川大輝/プレスラボ

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