ロート製薬×コクヨ【第2回】 「理想的なオフィス」を作るために必要なこととは?

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2016年5月31日

「WORKSIGHT」編集長を務めるコクヨの山下さんを迎え、ロート製薬の健康経営推進グループのメンバーと対談を行った第1回。ロート製薬が目指す「健康経営」のあり方は、世界的にも注目される「ウェルビーイング」の考え方とも共通点がありました。引き続き第2回では海外オフィスの事例を踏まえつつ、ロート製薬とコクヨが思い描く「理想のオフィス像」を探っていきます。

ロート製薬×コクヨ【第1回】健康」の先に目指すのは、海外の潮流を受ける「ウェルビーイング」の考え方

海外で注目されているさまざまな働き方

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坂手秀章(以下、坂手):海外ではどんな働き方やオフィスが注目されているのでしょうか。

山下正太郎(以下、山下):オーストラリアなどでかなり導入が進んでいるのが、「アクティビティ・ベースド・ワーキング(通称ABW)」という手法。場所と時間を限定せず自由に働く、ということです。子育てや介護をしている社員はもちろん、副業・兼業する社員が増えている中で、一様に9時から17時の間、社員をオフィスに閉じ込めておくのは現実的ではありません。働き方の選択肢が少なくなってしまうことは、社員の心のバランスを保つのに悪影響を及ぼす可能性が高い。重要なのは、「自分の生活を自分で組み立てられる」ということですよね。

大野琴(以下、大野):私たちが求める人財像にも近いかもしれませんね。

山下:あとは、日本でも増えてきましたが、特にアメリカでは健康のためにスタンディングデスクで立って作業する人が多いですね。「セデンタリーライフスタイル」といって、座りっぱなしで体を動かさない生活は体に良くない、ということが広く知られているためです。特にアメリカは医療費が非常に高額なので、そもそも「病気になるとマズい」という危機感が日本よりも強くあります。

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▲コクヨの昇降デスク「Sequence(シークエンス)」。デスクの天板が昇降し、立ったまま作業ができるようになっている。

坂手:会社の環境を整えるときにジレンマを感じるのが、バランスボールやダンベルなど健康器具や運動できるスペースなどを揃えても、一部の社員しか使わないこと。逆説的かもしれませんが、あえて不便さを追求したり、何もない環境だったりするほうが、「自発的な健康マインド」が育つのかな、とも思います。

山下:なにか立ち止まって考える機会がないと、変化していかないのかもしれませんね。今、オフィス環境でもっとも重要と位置づけられているのが、海外では「タウンホール」と呼ばれるスペースなんです。毎月もしくは週一回など定期的に全社員が集まって、会社の方向性や戦略を確認しあう場所のことなのですが、先進的なIT企業がこぞって導入しています。自由な働き方を指向しながら、一方でみんなの意識をたしかめあうというのは重要なことだと思います。

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▲タウンホールでの会議の様子

大野:そう考えると、ロートの各拠点に朝礼をするスペースがあったり、本社にある会館で毎月誕生会を開いたりしていることは、理にかなっているんですね。

「理想のオフィス」ってどんなもの?

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山下:最近はオフィスを「働く環境」というより「生活環境」として見直そうという傾向があります。たとえば、リラックスできる場所をつくったり、食堂をコミュニティスペースとして作り直したり、生活を営む場所としてデザインされています。その意味でオフィスが直面している課題は、カフェや自宅よりいかにいいパフォーマンスをだせるスペースにするか、ということですよね。

大野:たしかに、カフェって周りが多少ざわざわしていても、なぜか集中できますよね。

山下:専門家としては悔しいですけど、いいセンいってますよね(笑)。わりと働きやすくて。

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大野:個人的には、なにか目的意識を持って仕事ができるような職場環境や働き方があって、それを自分で選択できるといいなと思うんですよね。たとえば、時間制限を設けて利用する「集中ブース」とか。私は化粧品開発部門にいるのですが、そのブースで「集中できる香り」とか「リラックスできる香り」とか、脳波の動きで調香できるとおもしろいかもなぁ、と。

山下:「自分で選択できる」というのがとても重要で、「人から言われて燃える」よりも、「自燃する」ほうが最大のパフォーマンスと健康を実現できると思うんです。けれども世の中の価値観が多様化して、「これが正しい」と言い切れるものがなくなってきている中で、「これを使えば自燃できる」という環境を提供するのは、すごく難しい。個人的には「これはおもしろい!」という刺激や気づきを得られるオフィスはいいと思いますよ。ロート製薬さんなら、世界中の新商品を試したり食べられたりできるとか。

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坂手:モチベーションだけでなく健康にもつながりそうですね。あとは、やはりコミュニケーションの問題も重要だと感じているのですが、なにかオフィスに導入できる仕組みはあるのでしょうか。

山下:オフィスの設計においては「マグネットスペース」がポイントになってきますね。マグネットスペースというのはリフレッシュスペースや喫煙所など「人が自然にあつまるような場所」のこと。たとえば、トイレやエレベーターなど、人が必ず通る導線上にマグネットスペースを置くと、帰り際の人とコーヒーを買いに来た人がたまたま出会って、コミュニケーションが生まれますよね。あとは、コピー機やゴミ箱を1カ所に集約して、インフォメーションボードなどを置けば、そこにコミュニケーションハブができます。

大野:社員同士の接点が多くなるように、オフィスの配置を工夫するのですね。

山下:そういうハブをいくつか作っておくと、人の行き来も生まれますし、運動量も上がりますよね。出入口の数を絞ったり、動線を複雑にしたりするのも効果があります。

坂手:そういえば、本社の会館は出入口が少ないので、誕生会が終わると2つの出入り口が混み合うんですよね。500名くらいが一斉に出ようとするからなのですが(笑)。たしかに、そのときは近くの人と自然と会話しますね。

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▲「渋滞学」を応用し、入り口の数を絞るのも一つの手……!?(※イメージ図)

山下:東京大学の教授で「渋滞学」というのを研究されている西成活裕さんという方がいて。渋滞が起こる理由の一つに、人が気づかないくらいの緩やかな坂があると、車が自然と減速して渋滞になる、というのがあるらしいです。その理論を応用してオフィスにも緩い坂をつくって、作為的に渋滞をつくるとおもしろいんじゃないかと思います。なんとなく人が集まってくるような。

坂手:それはおもしろい(笑)。オフィスにはまだまだいろんな可能性がありそうですね。

大野:ロートのオフィスも、昔に比べたらだいぶ快適になりました。出入り可能なドアがたくさんあることで、オフィスの動線が効率化し過ぎているのかもしれません。出入り口を絞ることで歩く時間が長くなり、結果的に健康になる。「日本一不便だけど、健康なオフィス」を目指すのもいいかもしれませんね。

山下:オフィスには「正解」がないんですよね。今はむしろ課題に応じて変化していけることが大切かもしれません。常に改善し続けられる企業は競争力があると思います。

坂手:これをご縁に、なにか一緒にコラボできたらおもしろそうですね。「オフィスにシティファームを併設して、一息つきたいときにすぐ採りたての野菜を食べられる」とか。

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▲「シティファーム」が併設された、いつでも野菜が食べられるオフィス(※イメージ図)

山下:壁に野菜栽培キットを埋め込んでみるとか(笑)個人的には「食」について最近特に注目しています。例えば「時間栄養学」というのがあって、体内時計に応じて、いつどんな食事を取れば効果的に栄養が摂取できて健康になれるのか、という理論についても議論されています。それを活かしたオフィスのリフレッシュスペースがあれば、一日中高いパフォーマンスを発揮できるかもしれない。

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▲「時間栄養学」に基づき、時間ごとに最適な食事が用意されるようになる……かも?(※イメージ図)

大野:弊社では薬膳などについても研究しているので、なにかお力になれたらいいですね。

山下:とっても心強いです。「理想の健康オフィス」作りを目指して、引き続きよろしくお願いします。

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「健康経営」を軸に理想のオフィスについて語り合った両社。果たしてなんらかの形でコラボ企画は実現するのでしょうか……? 今後の展開にも期待大です。

※本文中のイラストに関しては、アイデアをもとに編集部で作成したイメージ図です。


文:大矢幸世+プレスラボ


【登場人物プロフィール】

コクヨ株式会社 WORKSIGHT編集長/ワークスタイル研究所 主幹研究員
山下正太郎(やました・しょうたろう)

2007年入社。戦略的ワークスタイル実現のためのコンセプトワークやチェンジマネジメントなどのコンサルティング業務に従事。コンサルティングを手がけた複数の企業が「日経ニューオフィス賞」を受賞。2011年にグローバルで成長する企業の働き方とオフィス環境を解いたメディア『WORKSIGHT(ワークサイト)』を創刊し、未来の働き方と学び方を考える研究機関「WORKSIGHT LAB.(現ワークスタイル研究所)」を立上げ、研究的観点からもワークプレイスのあり方を模索している。


ロート製薬株式会社 人事総務部 健康経営推進グループ リーダー
坂手秀章(さかて ひであき)

2008年入社。自ら「健康的な働き方」を考え、実践・行動できる社員の育成をめざして、日々の健康増進施策の企画・立案からオフィス環境・制度改革に至るまで、幅広く活動中。前任はマーケティング(商品企画)部門に在籍し、男性化粧品を担当。2013年にはメンズブランドの立ち上げ等を行った。


ロート製薬株式会社 人事総務部 健康経営推進グループ/研究開発本部 製品開発部
大野琴(おおの こと)

2008年入社。スキンケア製品の開発を行うと同時に、健康的な働き方や生活、美容に関して正しい知識を持ち、自ら選択できる社員で溢れた会社にすべく、日々邁進中。入社当初からエイジングに興味があり、肌を健やかにすることにこだわって多岐に渡る製剤開発を行ってきた。
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