“よそ者”だからできる、東北と都会の新しいコミュニティー「雄勝そだての住人」

2015年8月31日

雄勝そだての住人のウェブサイト。フレンドリーな雰囲気のサイトです。


生産者と消費者のコミュニティー

今、東北は宮城県・石巻市雄勝町(おがつちょう)に、「消費者に想いを寄せる生産者」と「生産者や町に想いを寄せる消費者」をつなぐ新しいコミュニティー作りに奔走する漁師の会社があります。

雄勝は県北東部にある太平洋に面したエリア。東日本大震災の震源地に最も近い場所の1つであり、津波被害により建物の8割が流されてしまい、一時期人口の8割も流出してしまった町でもあります。

そんな雄勝にある漁師の会社、『株式会社 雄勝そだての住人』は、「生産者と消費者の新しいコミュニティー」を目指しているといいます。この『雄勝そだての住人』で旬の海の幸を購入すると「雄勝そだての住人」(社名と同名のコミュニティー)になれるそうで、定期的に商品紹介や「手書きのチラシ」が届くとのこと。実物を拝見させていただきましたが、お世辞にもキレイなデザインとは言えないものの、逆に温かみがあり、親近感を感じられてよかったです。

私たちは、誰が作ったかわからない“顔の見えない”農水産品を日々食べています。一方で生産者も、誰が食べるのかわからない中で農作業や漁業をしています。生産者が「あなたに食べてもらいたい」と想い、都会の消費者も「あの漁師さんが育てた海の幸」という想いを感じながら食卓を囲む。消費者側としては、生産者の顔が見えることで安心でき、生産者である漁師の想いも一緒にいただけるのではないでしょうか。

「雄勝そだての住人」のイベントで、銀鮭のいけすを見学している様子。

このように生産者と消費者の関係が近く、ともに食でつながっていくような関係性を作りながら、その町や町の人への想いを寄せる。まるで雄勝町に実家ができたような、親戚に近いようなコミュニティーを「雄勝そだての住人」では目指しているそうです。

そのため、雄勝の旬の海の幸が購入できるだけではなく、「雄勝そだての住人」の会員に向けて、漁師が日々活動する漁港で、漁師の方と交流できるイベントを隔月で開催しています。漁師と共に実際に海に出たり、漁師だからこそ知っている美味しい調理の仕方を伝授してもらえるので、参加者の方には好評だそうです。


“よそ者”には厳しい現実もあったが、今は・・・

そんなコミュニティー「雄勝そだての住人」では、東京からきた“よそ者”がいます。ロート製薬 復興支援室(現・東北地域連携室室長)の佐藤功行さんです。佐藤さんは震災当時、ロート製薬の子会社に出向していましたが自社の本気度(※)を目の当たりにし、復興支援活動に志願。その後本社復帰と同時に2012年に現地入り。養殖・加工作業、マーケティング、催事出展、過疎地域におけるコミュニティー、町づくりなど漁師のあらゆる仕事の手伝いを始めました。
※参考記事:未来ある若者の夢をつなぐ「みちのく未来基金」

平日は、雄勝の民家で漁師と寝食を共にし、早朝から水揚げのお手伝いはもちろんの事、それに加えて漁師が苦手な分野である、商品開発や顧客分析といったマーケティングや、夕方の飲食店への営業を行うことで、最初はよそ者扱いであった漁師たちから、頼られ少しずつ受け入れてもらえるようになりました。

佐藤さんは雄勝に入ってからすぐに、社内のボランティア休暇を活用して様々な部署、役職の社員に雄勝に訪れてもらい、漁師と寝食を共にしながら、水産業の体験ツアーを実施しました。雄勝の漁師たちの人手不足をサポートする要素ももちろんありましたが、毎週5-6名、5週間にわたって、のべ30名強の社員が現地に入り、被災地の現状を肌で感じながら、地元の方や震災を機に雄勝町に入ってきた方と、一緒に膝をつきあわせて日本の未来を考える機会を準備しました。

震災によって東北で起こっている問題は15年、20年先の日本の地方でも、同じように起こりうる問題で、若年人口の空洞化、過疎高齢化、産業の後継者不足など、こういった課題を自社のあらゆる部署・世代の社員が雄勝での活動を通して一緒に肌で感じることで、本業を通しても社会的意義を生み出せる思考に繋がるのではないか、と佐藤さんは感じたそうです。

ロート製薬の復興支援活動(現・東北地域連携室の活動)は、漁業支援だけではなく「モリウミアス ルサイル」という、同じ雄勝町にある築93年の廃校をリノベーションして、子どもたちに向けた滞在型の自然体験施設の運営のサポートもしており、このプロジェクトにもロート製薬の社員がのべ200名以上関わっています。

ロート製薬からは佐藤さんの他にも4名のスタッフが東北地域連携室として、震災から4年半たつ今も現地に身を置き活動を行なっています。会社として、継続的な東北との関わりを続けるというミッションを明確にしており、今後の活動にも注目されています。

「雄勝そだての住人」の記念撮影写真。



これからの企業と消費者のあり方

震災から時間の経過とともに、企業として復興支援や被災地での営業活動から離れるところも多いと聞きます。また企業だけではなく西日本や首都圏などに住む個人も、きっかけがなければどんどん関係が薄れてしまうのも事実。

なかなか個人で寄付を継続的にすることは難しいですが、日々の消費活動の一部として、東北のおいしいものを買うということなら、継続的にできるかもしれません。

社会貢献とか被災地支援とか難しく考える必要はなく、ただ人気の産地直送商品で、しかも海の幸をたっぷり味わえる参加型イベントなどの参加権ももらえて、生まれ故郷とはまた違った「地元(ふるさと)」ができる、というくらいの気持ちで「雄勝そだての住人」になるのもよいかもしれません。