みちのく生が基金をつくる ~みちのく未来基金の「集い」より~

2016年3月29日

みちのく生を中心につくられる輪

東日本大震災。
太陽の光を浴びて輝く三陸の海は、あの日荒れ狂い、たくさんの命、財産、想い出を奪いました。

あれから5年が経過。奪われたものはもう戻ってきません。
しかし、あの日がきっかけとなり、震災遺児と、企業と、寄附者がつながり、新たな輪ができ始めています。

公益財団法人みちのく未来基金
東日本大震災の震災遺児が高校卒業後に大学、短大、専門学校へ進学するための奨学金を給付する公益財団法人です。
カゴメ(株)、カルビー(株)、ロート製薬(株)が発起企業となって2011年10月21日に設立され、2013年4月からはエバラ食品工業(株)も加わり、現在は4社の社員が基金事務局に所属し、運営を行っています。

みちのく未来基金:http://michinoku-mirai.org
未来ある若者の夢をつなぐ「みちのく未来基金」:http://gooddo.jp/corp/rohto/01/

復興の真の礎となるのは、子どもたち。夢に向かって思いっきり勉強し、学生生活を過ごしてほしいという願いから、入学金・授業料の全額(年間上限300万円)を返済不要で給付します。約1,800名いると言われている震災遺児。
震災遺児が一人も夢を諦めることのないよう、震災当時、お腹の中にいた子どもが卒業するその日まで、奨学金給付の活動を続けていくことを約束しています。

みちのく未来基金では毎年3月に「集い」というイベントを行います。この集いでは、奨学生(以下、みちのく生)、寄附者、基金を運営する事務局スタッフ(以下、基金スタッフ)が一堂に会し、高校を卒業し、新たに奨学金の給付を受ける学生を迎え、門出を祝います。それだけではなく、大学、短大、専門学校を卒業するみちのく生の旅立ちもこの集いでお祝いします。彼らが集まることで新たなつながりが生まれ、今後の人生の支えとなる人間関係を築くことができます。



2016年3月20日、第5期生となるみちのく生を迎え入れる集いが開催されました。
毎回、先輩みちのく生がサポートスタッフとして運営に携わりますが、今回、その人数はなんと約80名。
普段はなかなか基金の活動に参加できないけれど、集いのお手伝いだけは必ず行きます、というみちのく生も多くいます。

不安げな表情を浮かべながら集いに来る5期生。
「集いにはどんな人がいるんだろう。どんなことをさせられるんだろう・・・。」
そんな表情を読み取り、安心できるよう温かく迎え入れるサポートスタッフ。
数年前の自分の姿を5期生に重ね、当時の気持ちを思い出します。
「ここにいるのは全員、同じ境遇の親を亡くした者どうし。普段は周りに気を遣って親を亡くしたことを伏せていたけれど、ここでは何を話しても大丈夫。根底が一緒だから、いちいち説明しなくていい。」
不安な気持ちは同じ境遇の仲間や先輩との交流によって消えていくことを経験しているからこそ、後輩を支えたいとの思いでサポートスタッフは働きます。
また、この集いでスタッフとして働くのは、震災時にたくさん受けた支援に対しての恩返し、と考えているみちのく生も多くいます。
「見ず知らずの自分たちのために、たくさんの人が助けの手を差し伸べてくれた。今、生活ができて学校に通えるのもこの時の助けがあったから。これからは支えられるばかりではなく、支える側になって恩返しをしたい。」
感謝の心を忘れないみちのく生の背中を見て教わることも多いと、基金スタッフは言います。

集いの中では、5期生がひとりずつ、今後の夢や目標を発表しました。
「3人兄弟だから、一時は進学を諦めたけれど、基金があったから進学できました。震災後、基金以外にも私たちの知らないところでたくさんの人が支えてくれて、目に見えないたくさんの支援を受け、人と人のつながりの大切さを感じました。小学校教諭となって子どもたちにこの気持ちを伝えていきたいです。」 「震災後、地元で頑張っていたNPOの皆さんを見て、大学卒業後はNPOを立ち上げたいと考えています。」
「みんなのようにはっきりした目標はなく、まだ揺れていますが、家族や友人、周りの人を大切にできる人になりたいです。」
将来の夢や目標について、一人ひとりが自分の言葉で自分の想いを伝えます。


(5期生が目標を書いて貼り付けたボード。未来の目標、夢が詰まっています。)

「集いでお世話をしてくれた先輩のように来年は後輩を支える立場になりたい。」
「今まで受けた支援の恩返しをしたい。」
集い終了後、早々に来年の集いのスタッフを申し出てくれるみちのく生も多くいます。寄附者たちは、そんなみちのく生どうしのつながりやみちのく生の発表を見守ります。みちのく生どうし、みちのく生と寄附者、それぞれの輪ができ、そして、それらが重なり合い、現在のみちのく未来基金がつくり上げられています。



基金を必要としている子たちが待っています。

2016年3月20日に開催された集いでは、学業を終えて社会へ羽ばたく約80名の卒業生のうち、21名が参加しました。今年は2012年の給付開始初年度に4年制大学に進学したみちのく生が卒業する年。卒業後は看護師、保育士、作業療法士、メーカー勤務など、学生時代に学んだことを活かすため、地元を離れ都会で働く者、地元に戻る者、それぞれの道を歩みます。

みちのく未来基金ってどんな場所でしたか?と卒業生に聞くと
「一人ひとり、個性も夢も違う。それぞれを尊重しながら応援してくれるのがみちのく未来基金。」
「奨学金という枠を超えたつながりが基金にはある。震災は辛かったけれど、震災がなかったらみちのく生とは出会えなかった。ご縁を大切にしたい。」
「基金はまるで実家のような場所。実家にいる感覚と同じ。」

(第5期生の集い集合写真。みちのく生、寄附者、スタッフなど合わせて約370名の参加者となりました。)

卒業生の中には、「初任給の中からやりくりして寄附として振り込みます。」と言う子も。また、卒業生の妹や弟には、現役のみちのく生もおり、卒業後は自分が基金を支える立場にならなければと考えている子もいます。
みちのく生を支えている個人寄附者は累計で約3,500人、そして、企業・法人寄附者は約750社となり、寄附金も累計24億円となりました。現在までの累計給付者数は434名であり、約1,800名と言われている震災遺児のうち、25%の進学を実現しましたが、全員を進学させるためには累計約40億円が必要になると試算しています。また、震災以降、やむを得ず引っ越しをして、東北以外の県に住んでいる震災遺児もいます。基金では同様の支援をしている団体に情報発信の点で協力をするなど、現在も全国にいる未来のみちのく生を探し、進学の夢を諦めなくてすむことを伝え続けています。
夢を叶えるために、給付を待っている子どもたちはまだまだいます。



給付だけではない。基金は新たなステージへ。

みちのく未来基金の設立当初は、奨学金の給付をすることが大きな目的であり、それを軸に動いていましたが、年数が経つにつれて、みちのく生どうしが自主的に集まったり、また、集いなどイベントのときにはたくさんのみちのく生が集まり交流するようになりました。「学校の友達には話せない、みちのく生どうしだからこそ、話せることもたくさんある。」と言います。最近では、基金スタッフが彼らの声を聞き、寄り添い、みちのく生の交流の場を作ることが活動の軸の一つになっています。今後、約20年以上続くみちのく未来基金。みちのく生どうしが集まり、ホッとできる場、お互いを支え合う場としての発展へ向けて、基金は新たなステージに踏み出しつつあります。

    参照
  • みちのく未来基金URL:http://michinoku-mirai.org/
  • (編集:gooddo編集部、文、写真提供:ロート製薬)