ブルーライトが角膜上皮幹細胞に与える影響を解明
-硫酸亜鉛水和物によるブルーライトダメージの抑制効果を確認-
~デジタルデバイスなどから発せられるブルーライトと眼に関する研究~
2020年4月6日
ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:杉本雅史)は、デジタルデバイスなどから発せられるブルーライトが眼に与える影響に関する研究を行い、ブルーライトが角膜上皮幹細胞(以下、角膜幹細胞)に与える影響を解明しました。さらに、ブルーライトダメージに対し、硫酸亜鉛水和物が角膜幹細胞を保護し、ブルーライトによる炎症を抑制することを発見しました。
近年ではデジタルデバイスの普及により、ブルーライトによる眼や身体への負担が懸念されています。本知見を活用し、時代や環境の変化により多様化していくユーザーの目の症状に合わせた点眼薬の開発に取り組んで参ります。
研究成果のポイント
- ブルーライトが角膜幹細胞へのダメージを引き起こすことを明らかにした。
- ブルーライトダメージに対し、硫酸亜鉛水和物が保護効果を示した。
- ブルーライトダメージに対して有効な硫酸亜鉛水和物を配合する点眼剤の開発が期待される。
研究の背景
デジタルデバイスの急速な普及により、現代人の日常生活におけるブルーライトの暴露量は増えています。ブルーライトは、眼や身体に大きな負担をかけるといわれており、眼においては網膜領域を中心に研究が進められています。ブルーライトは網膜だけでなく、角膜上皮に対しても影響を与えることが示唆されています。しかし、日々新しい角膜上皮細胞を産み出し、角膜のターンオーバーや恒常性維持に重要な役割を果たす角膜幹細胞への影響は明らかになっていません。そこで当社は、ブルーライトが角膜幹細胞に与える影響を検討しました。
結果
ブルーライトの照射により角膜幹細胞の細胞生存率が減少し、炎症性サイトカイン(IL-1b)の遺伝子発現量が上昇した
試験方法:マウス角膜上皮前駆細胞(TKE2)に470nmのLED光線を14時間照射し、(a)wst-8法による細胞生存率の評価、(b)リアルタイムPCR法による遺伝子発現量の評価を行った。
Student’s T-test, ***:p<0.001, n=3, mean ± SD、ロート研究所実施
硫酸亜鉛水和物はブルーライトによる角膜幹細胞の生存率減少および炎症性サイトカイン(IL-1b)の遺伝子発現上昇を抑制した
試験方法:マウス角膜上皮前駆細胞(TKE2)を硫酸亜鉛水和物で6時間処理した後、470nmのLED光線を14時間照射し、(a)wst-8法による細胞生存率の評価、(b)リアルタイムPCR法による遺伝子発現量の評価を行った。
Student’s T-test, **:p<0.01, ***:p<0.001, n=3, mean ± SD、ロート研究所実施
考察
今回の結果より、ブルーライトは角膜幹細胞に炎症および細胞死を誘発し、ダメージを与えることが明らかになりました。角膜幹細胞へのダメージは角膜のターンオーバーを遅らせ、角膜の恒常性低下をもたらす可能性があります。これに対し、硫酸亜鉛水和物はブルーライトによる炎症および細胞死を抑制しました。本結果より、硫酸亜鉛水和物はブルーライトダメージに対して角膜幹細胞を保護し、ブルーライトによる炎症を抑制すると考えられます。