「気持ちいい清涼感」を目薬から胃腸薬へ
ロート製薬は目薬の清涼感研究から、不快な刺激を抑える処方技術「スマートクールテック®」(特許6687781号、特開2024-180505)を開発し、多くの目薬製品に応用してきました。
私たちは、これらの技術を目薬に搭載するだけで終わらせず、“お客さまに気持ちよさを提供する”ことを異分野へも拡げようと試みました。清涼感のメカニズムを受容体レベルで解析して得られた知見を、目薬から、異分野である胃腸薬へ応用したのです。
鍵となるのは、痛みや化学刺激を感知するTRPA1受容体。メントールは清涼感を生む一方でTRPA1を活性化し、沁みるような刺激感を生むことがあります。私たちはこれまでの目薬研究の中で、ペパーミントオイルに含まれるメントンやα-ピネンがTRPA1活性化を抑えることを見出してきました。
この刺激感をやわらげる発想を胃腸薬に展開するため、生薬成分として知られているチンピやニンジンに含まれる植物由来成分「リモネン」に着目。私たちは低濃度のリモネンがメントールによるTRPA1活性化を抑えることを見出しました。
パーシャルアゴニストとして作用することで、やさしい清涼感を実現すると考えられています。
この取り組みにより、「飲んだ瞬間スーッと気持ちいい」という新しい服用体験を、受容体レベルのサイエンスで設計することができるようになりました。目薬で培ったユーザビリティへの徹底したこだわりの知財技術を、胃腸薬へまで展開した事例です。
肌と目を融合したスキンケア技術
近年、老化細胞が分泌する炎症性物質(SASP因子)が周囲の正常細胞に炎症を広げ、老化を促進することが明らかになってきました。ロート製薬はこれを「老化炎症」と呼び、スキンケア領域で研究を進めています。
その中で、あるセラミドの組合せがSASP因子の分泌やその機序を抑えることを確認しました。
さらに、目薬や胃腸薬の研究で蓄積した知見からグアイアズレンスルホン酸塩に着目し、2種のセラミドを追加することで効果が強化されることを明らかにし、技術を確立しました(特開2024-152524)。
これらの成分を製品に応用し、老化炎症や慢性炎症の抑制を通じて健やかな肌の維持に貢献しています。
今後も目や胃腸、肌などに関する研究成果を融合し、独自の技術発展に取り組んでいきます。
鳥取の海洋資源を佃煮やキムチへ有効活用。地域活性化へ貢献
(左)海藻クロメ(右)クロメを活用した佃煮「KING KUROME」
鳥取県沿岸で活用されてこなかった褐藻「クロメ」。私たちは、鳥取大学と共同でこの地域資源に着目し、抽出条件や成分特性の検討を通じてクロメの有用性を見出し、その成果として、組成物および製造方法に関する特許(特許第7744640号)を取得しました。
研究成果を鳥取県倉吉市の食品加工会社・宝福一有限会社へ技術ライセンスし、クロメの魅力を引き出した佃煮「KINGKUROME」を発売し、研究成果の地域還元に貢献しました。「KINGKUROME」は地域資源を活かした加工品として、クロメの認知向上にも貢献しています。
さらに、この取り組みは鳥取県内に留まらず、川崎信用金庫が主催する知的財産マッチングイベントを通じて新たな展開を迎えました。
ロート製薬が技術の活用可能性を紹介、同金庫がSDGs推進の観点から川崎市の食品メーカーである有限会社グリーンフーズあつみが運営する川崎のキムチ専門店「おつけもの慶」をマッチング。ライセンス契約を締結し、同社による新商品「クロメキムチ」開発・販売へとつながりました。
これらの取り組みは、未利用資源の価値向上と地域企業との協働を促進し、地方創生や持続可能な社会づくりに寄与する、ロート製薬の知的財産活用事例の一つです。研究成果を地域へ、そして社会へと循環させる知財の活用を今後も推進していきます。