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感冒生薬エキスSFSはナチュラルキラー(NK)細胞活性化作用を持つことを発見!

研究開発

感冒生薬エキスSFS ナチュラルキラー(NK)細胞活性化作用を持つことを発見!

2021年11月30日

ロート製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:杉本雅史)は、風邪・インフルエンザから体を防御する免疫機能について研究しています。ナチュラルキラー(NK)細胞は、ウィルス感染細胞などの標的細胞を攻撃して排除する作用を持ち、免疫機能において重要な働きをします。そのことから、NK細胞の活性はウィルス感染による感冒を緩和する上で重要な作用であると考えられています。本研究では、感冒時の身体の力を高めて感冒の諸症状を緩和する感冒生薬エキスSFSがNK細胞を活性化させることを確認しました。本研究結果を、今後の内服薬の開発に応用していく予定です。

*感冒生薬エキスSFS:カッコン、ハンゲ、マオウ、サイコ、タイソウ、キキョウ、ショウキョウ、キョウニン、シャクヤク、オウゴン、ケイヒ、カンゾウの12種類の生薬を含むエキス

研究成果のポイント

  • 感冒生薬エキスSFSはNK細胞の作用である細胞傷害活性を増加させる

研究の背景

感冒やインフルエンザを引き起こすウイルスなどの病原体が体内に侵入すると、病原体を取り込んで異常になった自己細胞を素早く感知し、排除する仕組みである自然免疫が作動します。NK細胞は自然免疫の一端を担い、全身を循環しながら、ウイルスに感染した細胞やがん細胞(標的細胞)に対して細胞攻撃因子を放出し、排除させる(以下、細胞傷害活性)作用を持っています。

図1:NK細胞のウィルス感染細胞への作用

感冒生薬エキスSFSは、マオウ、カッコン、サイコ、キキョウ、ハンゲなど12種類の生薬が配合されたものであり、感冒の諸症状(咳、熱、寒気)に対する作用が知られています。しかし、感冒に対する作用機序および免疫機能に対する作用は不明でした。そこで、本研究では、NK細胞の細胞傷害活性に対する感冒生薬エキスSFSの作用を検討しました。

結果

感冒生薬エキスSFSはNK細胞の細胞傷害活性を増加させた

NK様細胞に感冒生薬エキスSFSを添加した後、標的細胞であるK562細胞と混ぜ合わせて培養させました。培養後に細胞のLDH値(乳酸脱水素酵素:細胞傷害マーカー)を測定し、NK様細胞の細胞傷害活性を算出した結果、感冒生薬エキスSFSは濃度依存的に細胞傷害活性を増加させました。

図2:感冒生薬エキスSFSのNK細胞の細胞傷害活性への効果

試験方法:KHYG-1細胞(NK様細胞)に感冒生薬エキスSFSを添加し24時間培養した。その後、K562細胞と混ぜ合わせて4時間培養した。培養後に、培地中のLDH値(乳酸脱水素酵素:細胞傷害マーカー)を測定した。LDH値からKHYG-1細胞の細胞傷害活性を算出した。グラフには、薬剤なし群の細胞傷害活性を100とした時の値を示した。
Dunnett test, *p<0.05, n=4-5, mean±SD、ロート製薬研究所実施

図3:感冒生薬SFSのNK細胞活性化作用の概略図

考察

感冒生薬エキスSFSの添加により、NK細胞は活性化されて細胞傷害活性を増加させました。つまり、12種類の生薬を配合した感冒生薬エキスSFSが、体内に侵入した病原体に対する免疫機能を高める可能性が示唆されました。その作用機序の一部にNK細胞が関係することを解明しました。本研究成果を免疫機能を高めることで、感冒症状を改善する内服薬の開発へ応用していきます。

本研究成果が社会に与える影響

感冒生薬エキスSFSの感冒症状改善のメカニズムの一つとして、免疫機能を高める作用が示唆され、本エキスを効果的に使用するための情報を提供できるものと考えています。

用語説明

  • NK細胞(ナチュラルキラー細胞)
    血液に含まれる白血球の一種で、リンパ球の約10~30%を占めています。全身を循環しながら、ウイルスに感染した細胞やがん細胞などの異常細胞を見つけ次第、攻撃し、排除する役割を持っています。
  • 細胞傷害活性
    NK細胞がウイルスに感染した細胞やがん細胞などの異常細胞に対する殺傷能力を示す数値です。