Open

「ノビレチン」と「DHA」の組み合わせで神経細胞の活性化作用が高まることを新たに発見

研究開発

シークヮーサーなどの柑橘類の果皮に多く含まれるフラボノイド「ノビレチン」に着目! 「ノビレチン」と「DHA」の組み合わせで神経細胞の活性化作用が高まることを新たに発見

2017年12月25日

ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:吉野俊昭)は、シークヮーサーなどの柑橘類の果皮に多く含まれる柑橘フラボノイド「ノビレチン」に着目し研究を行い、「ノビレチン」と「DHA(ドコサヘキサエン酸)」の組み合わせが神経細胞の突起伸長活性を相乗的に高めることを発見しました。なお、本研究結果は、2017年5月21日、第71回日本栄養・食糧学会大会(5/19~21、沖縄県にて開催)の発表をもとに、最新のデータも追加したものです。今後、本知見を活用し、商品の開発に取り組んでまいります。

研究の背景

当社は「健康寿命の延伸」を目指し、「医薬品」だけでなく、毎日の生活を支える「食」への取り組みも進めています。加齢に伴い脳の神経細胞が減少し、神経ネットワークを形成できなくなることが脳機能低下の要因の一つであることから、当社では脳の健康維持には神経細胞の活性化が重要と考え、神経突起伸長の促進を指標として、神経ネットワーク形成を促す成分の探索を行いました。

柑橘フラボノイド「ノビレチン」について

ノビレチン(図1)は、柑橘類の果皮に特有のフラボノイドで、特に、シークヮーサーやポンカン等に多く含まれます。柑橘類の果皮は、古くから、陳皮(チンピ)や橘皮(キッピ)としても使用されています。

脳の神経細胞

神経細胞は多数の神経突起とよばれる突起を伸ばし、他の神経細胞とシナプスで結合し、情報伝達しています。脳においては、神経細胞がそれぞれ単独で働くことでは機能することができず、個々の神経細胞が突起を伸ばし、他の多くの神経細胞とシナプスで結合して神経ネットワークを形成することで機能しています。しかし、老化が進むと、神経突起の伸長は鈍くなり、ネットワークが構築されにくくなるため、脳機能の低下が増加します。

研究結果

[研究1]ノビレチンが神経細胞の突起伸長に及ぼす影響

神経細胞分化のモデルであるPC12細胞を用いて、神経突起伸長活性を評価しました。その結果、ノビレチンに、顕著な神経突起伸長活性が認められました(図2A)。さらに、DHAやイチョウ葉とその活性を比較した結果、ノビレチンはこれら成分に比べて高い活性を有することが明らかになりました(図2B)。

(図2)
PC12細胞の培養液に各成分を添加し、24時間後の神経突起伸長活性を評価しました。
(A)顕微鏡写真(矢印が神経突起伸長部分を示す)。
(B)神経突起伸長活性の比較。
異なる文字間で有意差あり。(p<0.05)

[研究2]ノビレチンとの組合せにより相乗効果を示す成分の探索

ノビレチンの作用を増強させるような他の食品成分を探索した結果、DHAとの組合せにより相乗効果を示すことが明らかになりました(図3)。

(図3)
PC12細胞の培養液にノビレチン1μM、DHA 20μM、および、その組合せで添加し、24時間後の神経突起伸長活性を評価しました。
*:対照群と比べ有意差あり。
**:ノビレチン群と比べ有意差あり。
(ともにp<0.05)

[研究3]血液脳関門モデルにおけるノビレチンの透過性

血液脳関門は、脳に必要な物質・不要な物質を血液中から選択し、脳へ供給する、いわば門番のような働きをする組織です。脳への移行性を検証するため、血液脳関門モデルを用いノビレチンの透過性を確認したところ、ノビレチンは、脳への移行が高いと言われるカフェインと同等の透過性を示しました(図4)。

(図4)
培養細胞※を用いた血液脳関門モデルにおいて、ノビレチンの透過性を評価しました。
*:ノビレチン1μM群と有意差あり。
§:2群間で有意差あり。
(ともにp<0.05)
※血液脳関門の構成細胞である3種類の細胞(脳毛細血管内皮細胞、周皮細胞及び星状神経膠細胞の3種類)で構成されており、生体内での生理的な血液脳関門の特性を保持しています。

考察

ノビレチンは、神経細胞の突起伸長活性や血液脳関門モデルでの透過性から、脳に移行し、神経細胞を活性化させることが示唆されました。また、その突起伸長活性は、DHAとの組合せにより、相乗的に高まることを発見しました。
このようにノビレチンは神経細胞の活性を高める作用があることから、当社では今後、ノビレチンを中心に、脳の健康維持に対して、さらなる機能性研究を進めていくと共に、ヒトでの有用性についても検討を行なってまいります。

(用語解説)
  • 神経突起とは:神経細胞は多数の神経突起とよばれる突起を伸ばし、他の神経細胞とシナプスを形成することで、情報を伝達しています。
  • 神経ネットワーク(神経回路)とは:神経細胞がシナプスによって可塑的に結合して形成されたネットワーク。脳においては、個々の細胞がそれぞれ単独で機能することはできず、多くの神経細胞が連絡したネットワークを形成することで機能しています。
  • フラボノイドとは:ポリフェノールの一種で天然に存在する植物界に広く存在する天然色素化合物群の総称です。最近では人の体の特定の生理調節機能に働きかける機能性成分として注目されています。