日露戦争終結後の日本では、目の感染症であるトラホーム(トラコーマ)が流行し、大きな社会問題となっていました。目薬の需要が高まる中、1909年、私たちにとって初めての目薬となる「ロート目薬」を発売。以来100年以上にわたり、一般用医薬品(OTC)を中心としたセルフメディケーションを通じて、お客様の目の悩みに応え続けています。
一方、まだ十分な治療が届いていない眼の悩みにも応えていくため、私たちは長年培ってきた技術やネットワークを活かし、医療用眼科領域にも挑戦しています。
2020年には、点眼製剤や容器の開発に長年取り組んできた日本点眼薬研究所を子会社化し、本格的に当領域での取り組みをスタート。さらに、トップレベルの大学や、独自技術・素材を有する企業と幅広く連携することで、医療用点眼薬をはじめ、眼科領域における再生医療研究やデバイス開発も進めています。
この新たな挑戦により、私たちはアイケアの総合プロバイダーとして、これまで以上に幅広いお客様・患者さんの悩み・症状に寄り添う企業を目指していきます。
医療用点眼薬の開発に対する思い
アンメットメディカルニーズに応え、より安全で確かな治療を届けたい―その想いが、私たちの医療用点眼薬開発の原動力です。
ロート製薬は「目の健康への貢献」という使命のもと、患者さんが一日でも早くより良い治療にたどり着けるよう、これからも挑戦を続けていきます。
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眼疾患について
人が得る情報の80%は目から入るといわれています。遊びや仕事、子育て、勉強など豊かな日常生活を過ごすには、「見える」ことが大切です。しかしデジタルデバイスの普及や生活スタイルの変化、高齢化などにより、現代では年代を問わず多くの人がさまざまな眼疾患や視機能の不調を抱えるようになっています。
眼疾患には、日常生活の質(QOL)に関わる身近なものから、進行すると視機能に大きく影響するものまで多様な種類があります。
ドライアイや季節性アレルギー性結膜炎(花粉症)は深刻化しにくいものの、見え方やQOLに影響を与えやすい疾患です。症状が続くと仕事や学習効率の低下にもつながることもあり、適切な治療を受けることが大切です。
一方、緑内障、糖尿病網膜症、加齢黄斑変性症、白内障などは、失明に至る可能性のある疾患ですが、近年は医療技術の進歩により視機能低下を抑えられる例も増えており、白内障では手術による視力改善も期待できます。
生涯にわたり健やかな視界を保つためには、こうした疾患を早期に把握し、適切な対応を重ねながら「見える」毎日を守っていくことが大切です。
ウイルス感染症
目のウイルス感染症の代表的なものに、ウイルス性結膜炎とウイルス性角膜炎があります。
ウイルス性結膜炎では、白目の充血や、涙、目やにの増加がみられます。原因となる主なウイルスには、アデノウイルス、エンテロウイルス、コクサッキーA24変異株などがあり、これらの感染により流行性角結膜炎(はやり目)、咽頭結膜熱(プール熱)、急性出血性結膜炎などが発症します。特に流行性角結膜炎や咽頭結膜熱は強い感染力を持つため、学校や家庭などでの二次感染に注意が必要です。
一方、ウイルス性角膜炎は角膜にウイルスが感染して炎症を起こす疾患で、単純ヘルペスウイルス(HSV)、水痘帯状疱疹ウイルス(VZV)、サイトメガロウイルス(CMV)などが主な原因です。
これらのウイルス感染症は、感染力の強いものや再発を繰り返すもの、重症化して視機能に影響するものもあり、患者さんだけではなく社会にも大きな負担を与えます。しかし、治療選択肢はいまだ十分とは言えず、対症療法に依存している領域も少なくありません。だからこそ、新規治療薬の開発は、ウイルス増殖の抑制や炎症の軽減、再発予防を目指す上で大きな意義があります。
将来的には患者さんの視機能を守り、QOLを向上させるだけでなく、感染拡大防止や医療・社会全体の負担削減にもつながることが期待されています。
アレルギー性結膜疾患
アレルギー性結膜疾患は、花粉やハウスダストなどの抗原に対して結膜にアレルギー反応が起こり、痒み・充血・流涙・異物感等を伴う炎症性疾患です。季節性・通年性から重症型まで幅広い病型が存在します。
季節性アレルギー性結膜炎(花粉症)は最も一般的な病型で、スギやヒノキ花粉が主な原因です。通年性では主にダニやハウスダストが関与し、一年を通して症状が持続します。重症型には春季カタルやアトピー性角結膜炎などがあり、角膜障害を伴うと視力に影響することがあります。
アレルギー性結膜疾患はいずれの病型も痒み・充血に加え、視機能にも影響を及ぼすなどQOLを低下させ、再発により長期的な治療が必要となる場合があります。症状が強い時期には抗アレルギー点眼薬に加えてステロイド点眼薬が、春季カタルやアトピー性角結膜炎では免疫抑制点眼薬やステロイド点眼薬の併用が行われることもあります。
しかしステロイド点眼薬には眼圧上昇のリスクがあり、特に小児の使用では大きな課題となっています。
そのため、炎症を安全に抑える新規治療薬の開発は、患者さんの将来の視機能とQOLを守る上で、重要な意義を持つと考えています。
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屈折異常
物を見るためには、網膜にピントのあった像を結ぶことが大切です。しかし、角膜や水晶体、目の長さなどに異常が起こると、網膜上にきれいな像を結ぶことができなくなります。
これを屈折異常といい、近視や遠視、乱視などがあります。網膜よりも手前にピントが合う状態が近視、網膜よりも後ろにピントが合う状態が遠視です。角膜の形がきれいな球面ではなく、ピントの合う位置が2点以上生じてしまう状態が乱視です。
屈折異常は多くの方に見られるもので、眼鏡やコンタクトレンズで矯正可能なため、従来は治療を必要とする疾患と考えられてきませんでした。
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正視
網膜にピタリとピントが合って、クリアな像が結ばれます。
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近視
網膜より手前にピントが合ってしまいます。近くは見えますが遠くはぼやけて見えにくくなります。
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遠視
網膜より後ろにピントが合ってしまいます。こどもの遠視は斜視や弱視になる可能性もあり、治療が必要な場合もあります。
近年、屈折異常が将来的に重篤な眼疾患を発症するリスクを高めることが明らかになってきました。
こうした見え方の課題に向き合い、生涯にわたり健やかな視機能を保つことを支えることこそ、ロンジェビティ(人が長く健やかに、そして若々しく生きること)社会の実現につながると考えています。
身近で患者さんの数が多い領域に対して新たな治療薬を提示していくことは、未来の視機能を守り、社会に大きな価値をもたらす重要な取り組みだと捉えています。
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医療用点眼薬ができるまで
ロート製薬の医療用点眼薬の開発は、疾患に対する新しい治療アプローチの探索段階から始まります。大学を中心とした国内外の研究機関と連携し、国際学会での発信や研究者との交流を通じて、共同研究やシーズ(新薬候補)の導入につながる機会を広げています。
シーズが見つかると、まずは非臨床試験(薬理・動態・毒性試験)で有効性・安全性を確認します。このステップは、臨床試験(治験)へ進めるかを判断する上で非常に重要です。
また、並行して製剤開発にも取り組んでいます。
医療用点眼薬においても、患者さんにとっての使いやすさは重要な要素です。ロート製薬では、OTCで培ってきた知見を活かし、さし心地にも配慮した製剤設計を行っています。
さらに、グループ会社であるロートニッテンの技術基盤であるPFデラミ容器®を活用することにより、防腐剤無添加の製剤にも対応できるなど、製剤設計の選択肢を幅広く備えていることも、我々の強みです。
非臨床試験を通過したシーズは臨床試験にて、人での有効性・安全性を確認した上で薬事申請へと進み、承認後に患者さんのもとへ届けられる製品となります。
こうしたプロセスを着実に重ねながら、未充足な医療ニーズに応える新たなアイケアソリューションの創出を目指しています。
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