取締役副社長 チーフファイナンシャルオフィサー(CFO)斉藤 雅也
当社の財務方針の基本は、適正な財務規律のもと、成長投資・株主還元・財務健全性の最適なバランスを維持しつつ、経営資源を効率的に運用することでキャッシュ創出力を強化し、予測不能な環境変化にレジリエントに対応しながら、サステナブルな企業価値向上を図ることです。
2025年度は、不安定で厳しい経済・市場環境が続く中、全地域・全事業で増収となり、売上高、営業利益ともに過去最高を更新しました。各利益段階でも大幅な増益となり、EBITDAマージンも17.0%へ向上しました。ベトナムやインドネシアを中心とする東南アジアの高成長に加え、2024年度から新たに連結対象となったユーヤンサン社およびモノ社が業績に寄与し、円高の影響下でも海外売上が大きく伸長しました。国内でもインバウンド需要や「肌ラボ」、目薬などの主力カテゴリーが堅調に推移しました。
原材料費の上昇等により売上原価率はやや上昇したものの、大幅な増収効果がこれを吸収して増益を確保するとともに、資産の効率的な運用を進めたことで、事業全体のキャッシュ創出力をさらに高めることができました。その結果、研究開発費控除前の営業キャッシュフローを616億49百万円創出し、前年度に対して97億円(18.7%)増加しました。この収益力こそが、当社の財務戦略と将来の成長を支える重要な基盤です。
中長期成長戦略の進捗
中長期成長戦略の財務面における核心は、本業で安定的に稼ぐ力を高め、限りある経営資源を規律あるかたちで成長投資と株主還元へ配分することにあります。初年度は計画を上回る営業キャッシュフローを創出し、積極的な成長投資と株主還元の累進拡充を着実に進めました。配当性向30.4%、DOE3.7%、ROE12.1%と、中長期成長戦略で見据える水準を満たして推移しています。2026年10月に発表した「中長期成長戦略2026」では、2031年までの6年間の研究開発費控除前の営業キャッシュフローを3,800億円へ更新しました。
将来のキャッシュ創出力をさらに高めるため、需要拡大に対応した海外生産設備の増強や、研究とお客様の接点となる「ロートサイエンスハブ東京」の整備、グローバルERPプロジェクトをはじめとするDX・IT投資を進めています。研究開発ではROH-101の開発が申請段階に進むなど、将来の収益の柱と位置づけるメディカル分野を中心に積極的な投資を実行しています。
また、不確実性の高い事業環境においては、運転資本と固定資産のマネジメントを徹底し、安定供給と資金効率を両立させることが重要です。日本とアジアなどで生産・調達機能を強化するとともに、在庫をはじめとする運転資本の効率にも目配りし、環境変化に対するレジリエンスを高めながら、成長への投資余力を確保していきます。
キャッシュ創出力の強化
キャッシュ創出力の源泉は、人財力と生産・開発機能を土台とした「サイエンスベースの価値づくり」にあります。独自性と付加価値の高い製品・サービスを生み出す研究開発力、その価値を的確に伝えるマーケティング・販売力、環境変化に対応しながら安定供給を支える生産・調達力を磨き、これらを効率的に回転させることで、売上成長と収益性向上につなげ、安定的にキャッシュを創出できる体質を強化していきます。
さらに、財務数値の向上だけでなく、人的資本、サステナビリティ、ガバナンスといった非財務の経営基盤を強化することが、中長期的なキャッシュ創出力とサステナブルな企業価値向上につながると考えています。財務と非財務の両輪をかみ合わせながら、持続的な成長を実現していきます。
積極的な成長投資と規律ある資本運営
将来の収益基盤を広げるため、成長機会を見極めながら、規律ある投資判断を行っています。2025年度は、国内外のコア事業における生産設備や研究開発への投資を積極的に実施しました。また、スキンケアの中核ブランド「オバジ」の日本国内の商標権およびすべてのライセンスと販売権を取得したほか、タイのウェルネス企業タン・オリザ社の子会社化を決議するなど、アジアのWell-being領域での成長加速に向けた布石を打ちました。今後も、成長の源泉となるサイエンスベースの価値づくりに向けて積極的な研究開発投資を行いつつ、研究開発費比率を5%以内にコントロールします。また、キャッシュ創出力の中核となる人財投資や国内外の生産設備投資、業務効率と意思決定の質を高めるDX・IT投資、自社事業とのシナジーにより収益力を高めるM&A・出資などへ重点的に資本を配分していきます。
こうした積極的な成長投資を推進しながらも、2025年度はフリー・キャッシュ・フロー約180億円を創出し、さらなる成長に対応できる財務基盤を強化しました。資本効率の面では、当社の株主資本コストを6〜8%程度※と認識しており、これを安定的に上回るROEの確保を目指しています。2025年度のROEは12.1%と株主資本コストを上回る資本収益性を実現しました。また、事業に投じた資本をどれだけ効率的に収益へ結びつけているかを示すROICも重視し、WACCを上回る水準の維持・向上を通じて、持続的な企業価値向上につなげていきます。
株主還元については、2025年度は22期連続となる増配(年間46円)に加え、取得上限150万株・30億円の自己株式取得を決議し、2026年度に実施しました。今後も、成長投資・財務健全性・資本効率のバランスを保ちながら、配当の安定的な累進拡充や自己株式取得を機動的に検討し、企業価値向上に資する資本政策を実行していきます。
そして、こうした財務運営をさらに磨いていくため、株主・投資家をはじめとするステークホルダーとの建設的な対話を重視していきます。財務・非財務の両面から当社の価値を分かりやすく伝え、頂いたご意見を経営や取締役会の議論に活かすことで、開示の充実と相互理解を進め、資本コストの低減とサステナブルな企業価値向上を実現してまいります。
※ 外部専門家の知見を踏まえたCAPMによる定量的な分析結果(6~7%程度)に加え、投資家とのエンゲージメントを通じて把握した期待リターンや市場の評価水準を総合的に勘案して設定しています。
ロート製薬株式会社 取締役副社長
チーフファイナンシャルオフィサー(CFO)
斉藤 雅也