メントール配合により生じる不快な刺激感を軽減するための新技術「スマートクールテック™」を確立

研究開発

感覚受容体に着目した研究成果に基づき、 メントール配合により生じる不快な刺激感を軽減するための新技術「スマートクールテック™」を確立 ~目薬の「さし心地」を進化させる技術~

2020年3月25日

ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:杉本雅史)は、目薬のリーディングカンパニーとして、目薬の「さし心地」にこだわり、目薬の清涼感を進化させるべく長年研究を続けてまいりました。清涼感を実現する主体であるメントールは配合すると、人によっては不快な刺激感を感じることが分かっており、その不快な刺激感はメントール濃度が上がると高まる傾向にあります。そこで、さらに気持ちのよい「さし心地」を追及すべく研究を重ね、この度、不快な刺激感を軽減するための新しい処方技術「スマートクールテック™」を確立しました。本技術は静岡県立大学 食品栄養科学部 食品化学研究室との共同研究により、感覚受容体の一つである「痛み受容体(TRPA1)」に着目し評価した結果、ペパーミントオイルに含有されるメントンやα‐ピネンに痛み受容体の活性化抑制効果を見出したことに基づくものです。尚、本技術は今後発売予定の当社の目薬に応用する予定です。

メントールを配合することによって生じる不快な刺激感を抑制

長年、目薬(一般用点眼薬)の開発に取り組んできた当社は、より一層セルフメディケーションを推進したいという想いから、効果効能はもちろんのこと、さし心地にもこだわって製品化を行っています。目薬の「さし心地」は清涼感、浸透感、持続感など多面的な要素から構成されますが、今回はさし心地に大きく影響する清涼感に関する研究を行いました。
目薬の清涼感はメントール、カンフルなどの様々な清涼化剤の配合により実現され、中でも清涼感の主体を担うメントールは配合すると清涼感を感じる一方、人によっては不快な刺激感も感じることが課題となっていました。さらに、その不快な刺激感はメントールの濃度が上がると高まる傾向にあります。そこで、当社では、不快な刺激感を抑制し、より多くの人にとって気持ちのよい清涼感を実現するための処方技術を確立すべく研究に取り組みました。

痛み受容体(TRPA1)に着目し、不快な刺激感を緩和する成分を探索

メントールを配合してもより気持ちのよい清涼感を実現するため、感覚受容体(TRPチャネル)に着目しました。TRPチャネルは細胞膜に発現し、温度の知覚に関与するイオン型チャネルとして発見され、近年では温度だけではなく、多くの化学的刺激の受容に関与することが知られています。その中でもTRPA1はワサビやマスタードの辛味成分の受容体で、刺激感や痛みの受容に関与することが知られています。
目薬で清涼化剤として使用されているメントールは清涼感を感知する受容体(TRPM8)だけでなく、このTRPA1を活性化することが報告されており、人によっては清涼感だけでなく、痛みやしみる感覚など不快な刺激感が生じます。
そのため、当社ではTRPA1に着目し、不快な刺激感を緩和する成分の探索及び不快な刺激感を軽減するための新たな処方技術の確立を目指しました。

ペパーミントオイルに含まれているメントンやα-ピネンが痛み受容体(TRPA1)の活性化を抑制

メントールによって痛み受容体(TRPA1)が活性化されると、細胞内にCa2+が流入します。そこで、TRPA1を強制的に発現させた細胞を用い、細胞内へのCa2+の流入量を指標として、TRPA1活性化を抑制する成分、すなわち細胞内へのCa2+流入を抑制する成分の探索を行いました。その結果、ペパーミントオイルに含まれるメントンやα-ピネンにTRPA1活性化を抑制する効果があることを新たに見出しました。

試験方法:蛍光指示薬を含む溶液で処理したTRPA1強制発現HEK293細胞に、緩衝液で希釈した各試験溶液を添加した後、Ca2+流入に伴って細胞から発せられる蛍光量を測定した。

不快な刺激感を軽減するための新技術「スマートクールテック™」を確立

今回、メントールによる不快な刺激感の緩和に関わる新たな因子として、ペパーミントオイルに含有されるメントンやα-ピネンを特定しました。これらの成分を基軸として、目薬における清涼化剤の配合技術を進化させた結果、メントール配合により生じる不快な刺激感を軽減するための新しい処方技術「スマートクールテック™」の確立に至りました。尚、本技術は今後発売予定の当社の目薬に応用する予定です。

  • 「スマートクールテック」はロート製薬株式会社が使用する商標です。