Open

幹細胞のエクソソーム分泌量を増やす成分の発見

研究開発

幹細胞のエクソソーム分泌量を増やす成分の発見 ~老化した線維芽細胞でエクソソーム取り込みが回復。肌のアンチエイジングに期待~

2020年6月19日

ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:杉本雅史)は、「脂肪組織由来間葉系幹細胞」を用いた再生医療研究を進めており、その知見を様々な製品分野に応用しております。脂肪組織由来間葉系幹細胞には、組織の機能を修復させる効果が認められておりますが、その要因の一つとして幹細胞より分泌される「エクソソーム」が関与していることが報告されております。今回の研究では、「グリコーゲンとテトラペプチド-5」を組み合わせた成分に、脂肪組織由来間葉系幹細胞のエクソソーム量を増加させ、老化した皮膚線維芽細胞へのエクソソーム取り込みを促進する効果があることを見出しました。
本研究内容は日本香粧品学会誌 Vol.44(2020)No.3(2020年9月末発刊予定)にて公表予定です。

※テトラペプチド-5:当社が独自開発したペプチド。コラーゲン、ヒアルロン酸、エラスチン産生促進作用が確認されています。

エクソソームとは

エクソソームとは、細胞から分泌される約50~150nm程度の細胞外小胞であり、細胞間における情報伝達に重要な役割を担うことが明らかとなっています。エクソソームはあらゆる細胞から分泌されることが認められておりますが、その性質はエクソソームを分泌する細胞種によって異なることが確認されており、再生医療の分野では幹細胞由来のエクソソームの活用が着目されています。

【図】エクソソームを介した細胞間コミュニケーション

研究成果のポイント

  • 脂肪組織由来間葉系幹細胞のエクソソーム分泌を促進する成分の特定
  • 老化した線維芽細胞におけるエクソソーム取り込み量の低下を確認
  • エクソソームの分泌促進により、老化した線維芽細胞のエクソソーム取り込み量が若い線維芽細胞と同程度まで回復することを確認

研究の背景

再生医療分野における幹細胞治療では、その効果の一部を「エクソソーム」が担っていることが報告されています。脂肪組織由来間葉系幹細胞(以下、AdMSC)を用いた幹細胞治療においては細胞増殖促進や創傷治癒効果等の作用が認められていますが、これらの効果もエクソソームによるものであることが最近の研究で明らかとなってきました。
そこで今回の研究では、AdMSCより分泌されるエクソソームの量を増やすことで、老化した線維芽細胞内へのエクソソーム取り込みを増進させることを目的としました。

結果

AdMSCのエクソソーム分泌促進成分の特定

「グリコーゲンとテトラペプチド-5」の成分の組み合わせがAdMSCのエクソソーム分泌を促進させることを見出しました。

試験方法:成分(グリコーゲン+テトラペプチド-5)を添加していない群、及び成分(グリコーゲン+テトラペプチド-5)を添加した群のAdMSCより分泌されたエクソソームを抽出し、溶液中に存在するエクソソームの粒子濃度を割合として算出した。

老化した線維芽細胞ではエクソソーム取り込みが低下

AdMSCより分泌されたエクソソームの線維芽細胞内取り込みを若い線維芽細胞と老化した線維芽細胞で比較したところ、老化した線維芽細胞ではエクソソームを取り込む力が低下していることが明らかとなりました。

試験方法:AdMSCより分泌されたエクソソームを染色し、若い線維芽細胞、および老化した線維芽細胞に添加した。添加後48hの各種細胞内エクソソーム取り込み量の割合を細胞内の蛍光量を測定することで算出した。

エクソソーム分泌促進によって老化した線維芽細胞におけるエクソソーム細胞内取り込み量が回復

AdMSCによるエクソソーム分泌が増えたことによって細胞周辺のエクソソーム量が増加し、老化した線維芽細胞においても、エクソソームの取り込み量が若い線維芽細胞の水準まで回復することが明らかとなりました。

試験方法:AdMSCより分泌されたエクソソームを染色し、老化した線維芽細胞に添加した。添加後48hの各種細胞内エクソソーム取り込み量の割合を細胞内の蛍光量を測定することで算出した。

今後の展望

本研究成果により、グリコーゲンとテトラペプチド-5の組み合わせがAdMSCより分泌されるエクソソーム量を増加させ、老化した線維芽細胞へのエクソソーム取り込みを促進させることが明らかとなりました。AdMSCより分泌されるエクソソームは様々な効果を有することが明らかとなっているため、その効果を活用した製品開発が期待されます。今後もエクソソームの機能解析やその活用に向けた技術開発を行い、新しいエイジングケアの実現につなげてまいります。