加齢によって「肌」だけではなく「白目」もたるむ
~「白目のたるみ」予防に有効なエラスチン線維形成を促進する成分を新発見~
目の老化現象に関する基礎研究から
2018年9月25日
ロート製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役会長兼社長:山田邦雄)は、目の老化現象のひとつである白目の表面を覆う膜(結膜)のたるみ(以下、白目のたるみ)について、基礎研究を行ってまいりました。その中で、L-アスパラギン酸カリウムが結膜線維芽細胞において、エラスチン線維の構成因子であるFibulin5(以下FBLN5)の産生を促進し、エラスチン線維形成を促進することを発見しました。このことから、L-アスパラギン酸カリウムは結膜の弾性や伸縮性を向上し、「白目のたるみ」予防に寄与することが期待できます。なお、今回の発見に関しては特許を出願中です。
研究の背景
当社は1909年に初代目薬「ロート目薬」を発売して以来、疲れ、かすみ、乾き、アレルギーなど、「目」に関して様々な角度から研究に取り組んでまいりました。そのような研究に取り組む中で、今回は加齢とともに多くの方が発症する「白目のたるみ」といった現象(結膜弛緩(けつまくしかん))に着目しました。結膜弛緩の原因は特定されておりませんが、「加齢による結膜のエラスチン線維の変性・減少」、「物理的刺激(瞬きやコンタクトレンズなど)」、「炎症」などが影響すると報告されており、ドライアイや異物感、充血など様々な症状につながることが知られています。「肌のたるみ」に着目した基礎研究・素材開発を長年進めてきた当社は、肌の研究で得られた知見を活かし、本研究で結膜線維芽細胞を用い、「白目のたるみ」に関与するエラスチン線維の形成を促進する成分を探索致しました。
用語解説
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- エラスチン線維:
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組織の弾性や伸縮性、形状を保つために必要な弾性線維の一つ。FBLN5を含む数種の因子の複合体からなります。年齢とともに結膜のエラスチン線維量が減ることが分かっています。
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- FBLN5:
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線維芽細胞から産生される、エラスチン線維の構成因子の一つ。年齢とともに結膜のFBLN5の量が減ることが分かっています。ひだになって垂れ下がる余剰皮膚を特徴とする皮膚弛緩症の原因遺伝子の一つです。
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- 結膜線維芽細胞:
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結膜の弾性や形状の維持に重要な、コラーゲンやエラスチン線維の構成因子となるタンパク質(FBLN5やトロポエラスチン等)を産生する細胞。
研究内容
結果1:L-アスパラギン酸カリウムは結膜線維芽細胞においてFBLN5の遺伝子発現を高める
結膜線維芽細胞は、エラスチン線維を構成する複数のタンパク質を産生します。その中でも、特にFBLN5は加齢とともに結膜における発現が低下することが報告されています。そこで、FBLN5のmRNAの発現を高める成分の探索を行いました。その結果、L-アスパラギン酸カリウムがFBLN5のmRNA発現を誘導することが分かりました。
実験方法:0.5%L-アスパラギン酸カリウム溶液をヒト結膜線維芽細胞に作用させ、FBLN5のmRNA発現量(定量的リアルタイムPCR法)を測定した。(n=3、コントロールを100とする)
結果2:L-アスパラギン酸カリウムは結膜線維芽細胞においてFBLN5のエラスチン線維の軸への沈着を促進する
遺伝子レベルで発現誘導されたFBLN5がタンパク質として産生されると、FBLN5はエラスチン線維の軸に沈着し、エラスチン線維を形成していきます。そこで、L-アスパラギン酸カリウムがFBLN5のエラスチン線維の軸への沈着に及ぼす作用について検討しました。その結果、L-アスパラギン酸カリウムは、FBLN5のエラスチン線維の軸への沈着を促進することが分かりました。
実験方法:0.5%L-アスパラギン酸カリウム溶液をヒト結膜線維芽細胞に作用させ、FBLN5の蛍光染色を行い、FBLN5の沈着を検出した。
結果3:L-アスパラギン酸カリウムは結膜線維芽細胞においてエラスチン線維形成を促進する
L-アスパラギン酸カリウムがエラスチン線維形成に及ぼす作用について検討しました。その結果、L-アスパラギン酸カリウムはエラスチン線維形成を促進することが分かりました。
実験方法:0.5%L-アスパラギン酸カリウム溶液をヒト結膜線維芽細胞に作用させ、エラスチンの蛍光染色を行い、エラスチン線維を検出した。
考察
本研究から、結膜線維芽細胞において、L-アスパラギン酸カリウムがエラスチン線維の軸に沈着するFBLN5の産生を促進し、エラスチン線維形成を促進することが分かりました。
FBLN5は結膜の弾性や伸縮性、形状を保つために重要なタンパク質ですが、加齢とともに、結膜における発現が低下することが報告されています。FBLN5の発現を高め、エラスチン線維形成を促進するL-アスパラギン酸カリウムは、「白目のたるみ」の予防に有効な成分であり、目のアンチエイジングが期待できることが分かりました。