ロート製薬の毛髪研究における新知見
ワインに含まれる成分「酒石酸(しゅせきさん)」の毛髪関連細胞への作用を発見
結合組織性毛包細胞および毛乳頭細胞における毛髪関連成長因子の産生増加を確認
2019年1月24日
ロート製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役会長兼社長:山田邦雄)は、人生100年時代への挑戦をテーマに健康寿命の延伸をめざし、既存のヘルス&ビューティ事業から最先端の「再生医療」や健康の源となる「食」についての事業を進めています。育毛研究を続ける中、今回酒石酸(L-酒石酸)についての研究を行いました。研究の結果、酒石酸は結合組織性毛包細胞や毛乳頭細胞からの毛髪関連成長因子の産生を亢進することを確認しました。
研究の背景
当社は1995年より毛髪研究を行っています。薄毛は毛髪の成長期が数カ月~1年に短くなった状態であり、薄毛を改善するためには、短くなった成長期を元に戻し、ヘアサイクルを正常な状態に再生する必要があると考えられています。人生100年時代のQOLを高めることに貢献するため、毛髪関連細胞に影響のある成分の探索を行い、今回、「酒石酸」の毛髪関連成長因子の産生促進作用を見出しました。
酒石酸について
酒石酸はブドウ、レモンなど酸味と苦みのある果物に含まれる有機酸の一つで、ワインにも含まれる酸味成分です。
収斂作用や皮膚の弱酸性を保つ働き、また微生物の発育阻止効果があるといわれているほか、ケミカルピーリング溶剤として、皮膚の古い角質の除去等の効果が知られています。
研究の成果
結合組織性毛包細胞への作用
L-酒石酸は結合組織性毛包細胞からのFGF-7産生を促進する
L-酒石酸の添加により、結合組織性毛包細胞のFGF-7産生が有意に亢進することが確認されました。FGF-7は毛包上皮系細胞にある受容体に働きかけ、毛髪の成長を促進させる作用が知られています(参考文献1)。
試験方法:ヒト結合組織性毛包細胞にL-酒石酸を添加しFGF-7の産生をELISA法により測定した。(Dunnett's test, *P<0.05
vs control, n=3, mean ±SD、ロート研究所実施)
毛乳頭細胞への作用
L-酒石酸は毛乳頭細胞からのVEGF-Aの産生を促進する
L-酒石酸の添加により、毛乳頭細胞のVEGF-A産生が有意に亢進することが確認されました。VEGF-Aは毛包周囲の血管新生を促進し、発毛や毛髪の成長を促進させる作用が知られています(参考文献2)。
試験方法:ヒト毛乳頭細胞にL-酒石酸を添加しVEGF-Aの産生をELISA法により測定した。(Dunnett's test, *P<0.05
, **P<0.01 , ***P<0.001 vs control, n=3, mean ±SD、ロート研究所実施)
今後の展望
今回酒石酸の新たな作用として結合組織性毛包細胞のFGF-7産生並びに毛乳頭細胞のVEGF-A産生を促すことを見出しました。今後も毛髪研究を通じて、人生100年時代のQOL向上に努めてまいります。
参考文献
- Danilenko DM et al.: Keratinocyte growth factor is an important endogenous
mediator of hair follicle growth, development, and differentiation. Normalization
of the nu/nu follicular differentiation defect and amelioration of chemotherapy-induced
alopecia, Am J Pathol 147,145- 154, 1995
- Yano et al.: Control of hair growth and follicle size by VEGF-mediated
angiogenesis. J Clin Invest, 107, 409-417, 2001