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ソニーの新素材『トリポーラス™』に体臭吸着および原因菌捕捉効果の有用性を発見

研究開発

ロート製薬とソニーの共同研究 ソニーの新素材『トリポーラス™』に体臭吸着および原因菌捕捉効果の有用性を発見 ~余剰バイオマスというサスティナブルな素材の活用で環境にも配慮~

2019年3月4日

ロート製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役会長兼社長:山田邦雄)は、ソニー株式会社が独自開発した余剰バイオマス(再生可能な生物由来の有機性資源)である籾殻を原料とした多孔質炭素材料『トリポーラス』が、加齢臭の原因である2-ノネナールをはじめとする各種体臭成分への吸着特性および原因菌の捕捉効果が高いことを発見しました。本研究成果は日本味と匂学会第52回大会(さいたま市)にて発表いたしました。引き続き体臭成分の吸着および原因菌の捕捉効果に関する研究に取り組むと同時に、製品開発へ応用していきます。

研究の背景

当社は2000年に制汗剤市場に参入して以来、汗とニオイに関する研究を進めて参りました。特に加齢臭の原因である2-ノネナールは水だけでは落ちにくく、少量でもニオイを強く感じるため、洗浄剤などを用いて完全に除去することが必要です。当社は2-ノネナールの高い除去技術を確立し、洗浄剤に応用してまいりました。体臭成分の吸着や原因菌の捕捉には活性炭に代表される多孔質原料も非常に有用ですが、体臭成分の吸着特性や原因菌の捕捉効果は素材によって異なります。そこで本研究では、各種体臭成分の吸着特性および原因菌に対する捕捉効果について、イネの籾殻由来の多孔質炭素材料であるトリポーラス(ソニー株式会社)と既存の各種活性炭とを比較検証し、高い有用性を持つ素材探索・評価を行いました。

植物由来多孔質炭素原料『トリポーラス』について

マイクロ孔、メソ孔、マクロ孔の3種類の領域の細孔を有する

従来の活性炭で確認されるマイクロ孔(2nm以下)に加え、マイクロ孔よりも大きなメソ孔(2~50nm)とマクロ孔(約1μm)が多数複合して存在した独特な微細構造を有しています。

再生可能な余剰バイオマス材料で環境に配慮

原料となる籾殻は日本だけで年間約200万トン、世界中では年間約1億トン以上も排出されています。余剰バイオマスというサスティナブルな素材を活用することで、環境に配慮した循環型社会への実現にも貢献します。

研究の成果

結果1:各種体臭成分に対する吸着特性について

トリポーラスは、既存の活性炭よりも各種体臭成分(汗臭、足臭、腋臭、加齢臭)の吸着率が高く、体臭成分の種類による影響も小さいことが分かりました。

試験方法:三角フラスコに各素材を秤量し、各体臭成分(酢酸水溶液(汗臭)、アンモニア水溶液(汗臭)、イソ吉草酸水溶液(足臭)、2-ノネナール溶液(加齢臭)、ヘキサン酸溶液(腋臭))を入れ、水溶液3種はガス検知管(GV-100型、株式会社ガステック)を用いて残存体臭成分を定量し、溶液2種は香気成分捕集剤MonoTrap®(ジーエルサイエンス株式会社)にて体臭成分を捕集後、溶媒抽出し、ガスクロマトグラフィを用いて定量を行った。なお、各種素材の体臭成分の吸着率は素材なしをコントロールとして算出した。

結果2:各種体臭成分の原因菌に対する捕捉効果について

トリポーラスは、既存活性炭A及びBと同じく、既存活性炭Cよりも各種体臭成分の原因菌に対する捕捉効果が高いことが分かりました。

試験方法:各素材を秤量し、一定量、各種体臭の原因菌(S. epidermidis, S. aureus, C. minutissimum, C. xerosis)が入った滅菌蒸留水に入れ、一定時間経過後、ろ過した。その後、ろ液とろ過後のメンブレンフィルターを洗い出した抽出液について生菌数測定を行った。なお、菌の捕捉量の算出は接種菌数からろ液と抽出液の生菌数を引算したものとし、Log reductionにて評価した。

まとめ・考察

以上の結果から、イネの籾殻由来の多孔質炭素材料であるトリポーラスは、既存の活性炭とは異なる特徴的な細孔分布を有することで、各種体臭成分への吸着特性に優れることに加えて、各体臭の原因菌の捕捉効果も高いことが分かりました。今後、加齢臭をはじめとする体臭除去のアプローチとして、本材料を洗浄剤などの吸着材として応用することで、より効果的なアプローチが可能になると考えます。

  • 「トリポーラス」は、ソニー株式会社の商標です。
  • 「NEVER SAY NEVER」は、ロート製薬株式会社の登録商標(第5838870号)です。