五苓散(ごれいさん)(ソウジュツ配合)の天気頭痛※への効果を発見
気圧低下で起こる脳血流量増加に対する五苓散の抑制効果を確認
~熊本大学とロート製薬の共同研究~
2021年3月18日
熊本大学(学長:原田信志)及びロート製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:杉本雅史)は、天気頭痛※の研究を行っています。今回、熊本大学大学院生命科学研究部の倉内祐樹助教との共同研究を行い、五苓散(ごれいさん)(ソウジュツ配合)の天気頭痛への効果について調べました。本研究において、気圧が低下すると脳血流量が増加し、その後通常気圧に戻しても、元の脳血流量まで減少・回復しないことがわかりました。また、五苓散(ソウジュツ配合)を投与すると、気圧の低下による脳血流量の増加が抑制されること、通常気圧に戻すと、元の脳血流量まで減少・回復することがわかりました。さらに、有名な鎮痛成分であるロキソプロフェンにおいては、気圧の低下による脳血流量増加を抑制しましたが、通常気圧に戻しても、元の脳血流量まで減少・回復しませんでした。これにより、五苓散(ソウジュツ配合)は脳血流量を減少させる点において、ロキソプロフェンとは異なる作用機序を持つことが示唆されました。
本研究結果から、五苓散(ソウジュツ配合)が天気頭痛で悩む方々をサポートできるものと期待しています。本研究内容は第94回日本薬理学会年会にて学会発表(2021年3月10日付)されました。
※:天気頭痛:天気(気圧)の変化等で起こる頭痛
研究成果のポイント
- 新たな天気頭痛モデルの試験系により、気圧変化による脳血流量変化の測定と、それに対する五苓散(ソウジュツ配合)の効果を検証することができた。
- 本研究によって、脳血流量の減少・回復に対して五苓散(ソウジュツ配合)とロキソプロフェンの作用機序が異なる可能性が初めて明らかとなった。
- 五苓散(ソウジュツ配合)は、ロキソプロフェンとは異なる作用機序により、気圧変化による脳血流量への影響を低く抑えるため、天気頭痛で悩む方々への新たな対処法として期待できる。
研究の背景
頭痛は、様々な要因により引き起こされ、中には気圧や湿度などの天気の変化がきっかけとなり発症する「天気頭痛」をお持ちの方もいます。一般的な対処法として、鎮痛剤が使用されていますが、症状によってより良い選択ができるよう、多くの対処法が期待されています。
今回の研究では、気圧を低下させて行う新たな天気頭痛のモデルを用いた五苓散(ソウジュツ配合)の効果を検証しました。また、有名な鎮痛成分であるロキソプロフェンについても同様の試験を実施し、比較を行いました。
結果
気圧を低下させた際、脳血流量は増加しましたが、五苓散(ソウジュツ配合)とロキソプロフェンをそれぞれ投与すると、脳血流量増加を抑制することがわかりました(図1)。
図1 気圧低下時の脳血流量の比較
(投与なし、五苓散(ソウジュツ配合)、ロキソプロフェンの比較)
試験方法:
天気頭痛モデル(気圧調整できる室内にて、薬剤投与後、通常気圧1時間、気圧を-50hPa低下させて1時間、そして通常気圧に戻して1時間観察したモデル)において、脳血流量を測定した※1。気圧を低下させる10分前からの脳血流量変化を示した。
※1:図1、図2共にCMOSイメージングデバイス(熊本大学と奈良先端科学技術大学院大学共同開発機器)使用
また、気圧を低下させた後、通常気圧に戻すと、投与なしあるいはロキソプロフェン投与によっても、元の通常気圧時の脳血流量まで減少・回復しませんでした。しかし、五苓散(ソウジュツ配合)投与によって、元の通常気圧時の脳血流量まで減少・回復することがわかりました(図2)。
本研究により、五苓散(ソウジュツ配合)は、ロキソプロフェンとは異なり、気圧変化による脳血流量への影響を低く抑えることで天気頭痛に効果を表すことが示唆されました。
図2 初期の通常気圧時と気圧低下後の通常気圧時の脳血流量の変化
(投与なし、五苓散(ソウジュツ配合)、ロキソプロフェンの比較)
試験方法:
天気頭痛モデル(気圧調整できる室内にて、薬剤投与後、通常気圧1時間、気圧を-50hPa低下させて1時間、そして通常気圧に戻して1時間観察したモデル)において、初期の通常気圧時と気圧低下後の通常気圧時の脳血流量の変化量を棒グラフで示した※1。
Mean ± S.E.M. n = 4. One-way ANOVA followed by Dunnett's multiple comparisons test. *: p<0.05
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
五苓散(ソウジュツ配合)が、天気頭痛で悩む方々を、ロキソプロフェンとは異なる新たな対処法としてサポートし、気圧変化に負けない体質へと導いてくれるものと考えています。
特記事項
本研究成果は、2021年3月10日(水)に「第94回日本薬理学会年会」にて発表されました。
Title:“Comparison of the effects of Goreisan and loxoprofen on cerebral blood flow dynamics in meteoropathy model mice”
Authors:Sumika Ryu1, Yuki Kurauchi1, 2, Risako Tanaka1, Makito Haruta3, Kiyotaka Sasagawa3, Takahiro Seki1, 2, Jun Ohta3, Hiroshi Katsuki1, 2
1. 熊本大学 薬学部 薬物活性学分野
2. 熊本大学 大学院生命科学研究部 創薬科学講座 薬物活性学
3. 奈良先端科学技術大学院大学 先端科学技術研究科 光機能素子科学研究室