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動物実験代替法への取り組み。長期評価可能な3次元培養皮膚モデルの構築

研究開発

―動物実験代替法への取り組み― 長期評価可能な3次元培養皮膚モデルの構築 ~シェフィールド大学とロート製薬の共同研究~

2021年8月31日

ロート製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:杉本雅史)は、ロートグループ総合経営ビジョン2030「Connect for Well-being」の実現に向け、動物実験代替法を用いた製品・素材評価を積極的に取り入れた研究開発を推進しております。今回、安全性試験における動物実験代替法への取り組みの一環としてシェフィールド大学臨床歯学研究科(イギリス サウス・ヨークシャー州)との共同研究にて細胞工学的な手法を用いた検討を進めた結果、長期の評価試験が可能な3次元培養皮膚モデルの作成に至りました。
本研究内容はthe 11th edition of the World Congress on Alternatives and Animal Use in the Life Sciences(WC11)(2021年08月23日~09月02日)にて発表いたしました。

研究成果のポイント

  • 長期の評価試験が可能な3次元培養皮膚モデルの構築
  • 化学物質に長期間暴露されるときの皮膚への影響を評価できる技術
  • 皮膚に長期使用される成分の影響について評価できる新たな代替法としての応用に期待

研究の背景

図1:3次元培養皮膚モデルの構築と細胞を用いた評価

これまでの3次元培養皮膚モデルは、完成後の評価期間が3-5日程度に限られているという課題があり、化学物質を長期間暴露させることが難しいとされておりました。
今回の研究では、線維芽細胞由来のマトリックス上にhTERT-1を導入したケラチノサイトを培養する方法によって作製された3次元培養皮膚モデルが、組織学的にヒトの皮膚構造に類似したものであり、完成後14日間程度、化学物質の影響を評価できることを確認しました。

結果

今回の研究で構築された3次元培養皮膚モデルは、ヘマトキシリンエオジン染色(HE染色)像の観察によって皮膚の表皮層と真皮層からなり、免疫染色にて真皮層にコラーゲン4、表皮層にE-カドヘリンおよびサイトケラチンの発現が観察されたことによって、本モデルが組織学的にヒトの皮膚構造に類似したものであることが確認されました。

図2:3次元培養皮膚モデルのHE染色および免疫染色像

【試験方法】
構築された3次元培養皮膚モデルの組織切片を作成し、ヘマトキシリンエオジンにて染色し顕微鏡にて観察した。また組織切片に対して抗原抗体反応を利用し、皮膚に発現するタンパクの発現について観察した。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究により構築した3次元培養皮膚モデルを用いることで、化学物質等の皮膚への累積刺激評価、アレルギーリスクを評価する手法しての応用を期待しております。今後もシェフィールド大学との協働を通して新たな評価技術研究を進め、動物実験削減の一助になればと考えています。

特記事項

本研究成果は、2021年8月23日(月)―9月2日(木)(オランダ時間)にて行われたthe 11th edition of the World Congress on Alternatives and Animal Use in the Life Sciences(WC11)でのe-posterにて発表しました。
タイトル:“A full thickness long term skin equivalent allows repeated testing of cosmetics to evaluate efficacy and safety”
なお、本研究は、シェフィールド大学臨床歯学研究科 Helen Colley准教授の協力を得て行われました。

用語説明

※1 hTERT-1:
ヒトテロメア逆転写酵素Human telomerase reverse transcriptaseのことで本遺伝子を初代培養細胞に導入することで、初代培養細胞の性質に近い状態を保持したまま、安定的な継代が可能とされています。