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ロート製薬×三重大学の共同研究 グロビン蛋白分解物による内臓脂肪蓄積抑制効果を発見

研究開発

ロート製薬×三重大学の共同研究 グロビン蛋白分解物による内臓脂肪蓄積抑制効果を発見 エネルギー代謝に関わる遺伝子UCP1の発現亢進を確認

2021年9月28日

ロート製薬株式会社(本社:大阪市、代表取締役社長:杉本雅史)は三重大学(学長:伊藤正明)と機能性素材「グロビン蛋白分解物(GD)」の健康への影響に関する研究を進めてまいりました。
今回、三重大学大学院地域イノベーション学研究科の臧黎清特任講師、医学系研究科の島田康人講師らの研究グループとの共同研究にてGDによるUCP1を介した内臓脂肪蓄積抑制効果を発見しました。
本研究内容はオンライン科学誌『Frontiers in Nutrition』 (Frontiers Media SA 社)にて日本時間2021年9月28日(火)午前2時に公開されましたのでお知らせいたします。

研究成果のポイント

  • GDの摂取により内臓脂肪の蓄積が抑制され、エネルギー代謝に関わるUCP1の発現量が亢進していたことを発見。UCP1を介した内臓脂肪蓄積抑制効果が示唆された。
  • これまでGDの摂取により食後の中性脂肪上昇抑制効果や血糖値上昇抑制効果など生活習慣病関連因子への効果が確認できていたが、今回さらに肥満の病態への効果も確認でき、その減少に関与する遺伝子まで明らかにすることが出来た。
  • 体質改善による生活習慣病対策が可能となることで、運動療法や食事療法に追加可能な新しい選択肢を提供できるようになる可能性がある。

研究の背景

肥満症は様々な病気を引き起こす因子として知られており、運動療法や食事療法など肥満症の改善は様々な対処法が存在します。近年は肥満の改善に寄与する機能性素材が多く見つかっており、運動や食事改善などの適切なアプローチと組み合わせることで効果的に脂肪を減らせることが期待されています。
GDは食事からの中性脂肪の吸収抑制、食後中性脂肪の上昇抑制、食後血糖値の上昇抑制効果が報告されており、これらの報告から肥満症にも効果があることが考えられたため今回、肥満に対する共同研究を行いました。

結果

GDは肥満モデルゼブラフィッシュの内臓脂肪量を減少させる

肥満モデルのゼブラフィッシュにGDを経口投与したところ、血中脂質量と総コレステロールがコントロール群より有意に減少し、内臓脂肪量も抑制されました。(図1)

図1:肥満モデルにおける.A血中脂質量(TG)、B:総コレステロール(TCHO)、C:内臓脂肪量(VAT)

試験方法:通常飼育(ND)および肥満モデル(HFD)のゼブラフィッシュにGDを投与し、血中脂質量、総コレステロール、内臓脂肪量をそれぞれ測定した。(*p<0.05 **p<0.01 vs ND) student's t test n=5、三重大研究室にて実施

GD投与により白色脂肪組織中のUCP1遺伝子の発現レベルが上昇した

別の肥満モデルを用いて、GD投与による内臓脂肪への効果に関する作用機序を解明するため、白色脂肪組織中の遺伝子発現を確認しました。その結果、エネルギー代謝に関与する遺伝子UCP1遺伝子発現が顕著に上昇しました。さらに、白色脂肪組織の免疫染色の結果、GD摂取により脂肪細胞の肥大が抑制され、UCP1蛋白質も誘導されたことを発見しました。これらの結果からGDがUCP1を誘導することによって内臓脂肪を減少させることが明らかになりました。

図2:白色脂肪細胞でのUCP1の発現量

試験方法:通常飼育モデル(ND)および肥満モデル(HFD)にGDを投与し、定量的PCRにより白色脂肪細胞中のUCP1遺伝子発現量を調べた。NDのコントロール群を1として比較した。(P<0.05 vs GD非投与HFD群) student's t test n=10、三重大研究室にて実施

考察

今回の結果より、GD摂取による肥満改善効果は血中脂質や血糖値の上昇抑制など既存の報告によるメカニズムだけではなく、エネルギー代謝経路を変化させることで肥満の改善に役立つことが示唆されました。このことは過剰な栄養成分の吸収抑制に加えて、体質改善につながりより効率よく肥満を改善することに寄与するものではないかと考えています。今後はGDに含まれるどのペプチドが機能性に関与する成分であるかなどの研究を進めて参ります。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究成果により、食品素材による肥満対策・生活習慣病対策の選択肢がさらに広がると考えています。今後、さらなる研究を重ね、社会の健康や「Well-being」に繋がる成果を積み重ねていきます。

特記事項

本研究成果は、オンライン科学誌『Frontiers in Nutrition』 (Frontiers Media SA社、インパクトファクター6.575)で中央ヨーロッパ時間9月27日(18:00)、日本時間9月28日(02:00)に公開されます。

著者名:Liqing Zang, Yasuhito Shimada, Hiroko Nakayama, Izumi Matsuoka, Youngil Kim, Djong-Chi Chu, Lekh R. Juneja, Rika Tsuruta, Yuka Sasakawa, Junya Kuroyanagi, Norihiro Nishimura

用語説明

  1. グロビン蛋白分解物(GD)
    中性脂肪の上昇を抑えるはたらきがあることが分かっている、バリン-バリン-チロシン-プロリン(VVYP)のテトラペプチドを含んだペプチド混合物です。
  2. UCP1
    エネルギー代謝を調整する遺伝子。通常、エネルギーを熱に変換し脂肪を燃やす褐色脂肪細胞中に多く発現することが知られている。