Open

年齢肌におけるシミのできやすさに対する新知見

年齢肌におけるシミのできやすさに対する新知見 ~δトコフェロールが老齢細胞で亢進するメラニン産生促進因子の分泌量を抑制~

2021年11月4日

ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:杉本雅史)は、Well-beingな社会の実現に向けて、スキンケア領域において挑戦を続けており、その一つとして年齢を重ねることでの肌変化に関する研究をすすめています。今回、年齢を重ねることでできやすくなるシミに関する研究を進めた結果、老齢細胞にてエンドセリン-1(ET-1)の分泌に繋がるメカニズムを発見し、δトコフェロールがその分泌を抑制する働きがあることを明らかにしました。本研究成果は、年齢肌のための新たな製品開発へ応用していきます。

研究成果のポイント

  • 老齢由来のケラチノサイトにおいてセリン合成に関わる遺伝子PHGDH発現が低下し、それによりメラニン産生を促進する因子ET-1の分泌量亢進を確認
  • PHGDH発現の低下により亢進したET-1分泌量をδトコフェロールが抑制することを確認
  • 年齢肌のためのスキンケア製品開発への応用に期待

研究の背景

我々は、これまでのスキンケア研究の結果、年齢を重ねることで特に30代後半以降になるとシミのできるスピードが上がることを報告してきました※1。これまでに、美容医療の施術研究から、シミ部位のケラチノサイトの増殖を促進する作用機序を見出しました※2。しかしながらシミ形成におけるケラチノサイトの寄与に関しては解明されていない分が大きいのが現状です。
そこで今回、加齢によってケラチノサイトに起こる遺伝子発現変化がメラノサイトへの刺激に繋がるか、研究を行いました。

※1:大人のシミ、急増!!シミの増加スピードは、年齢によって種類と速さが違うことを確認
※2:IPL光治療による美白メカニズムの解明(第36回日本美容皮膚科学会)

結果

老齢由来のケラチノサイトはPHGDH発現が低下した

それぞれ3ドナー由来の若齢由来ケラチノサイトと老齢由来ケラチノサイトを用いて、DNAマイクロアレイ法を用いて遺伝子発現の差異を解析しました(図1)。その結果、PHGDH発現の低下が確認されました。再度リアルタイムPCR法を用いて発現の差異を確認した所、老齢由来ケラチノサイトではPHGDH発現が低下していることが分かりました。

図1 若齢並びに老齢由来ケラチノサイトにおけるPHGDH発現

<試験方法>
正常ヒトケラチノサイト(young:新生児3ロット,old:老齢成人3ロット)を培養し、24時間後にRNA抽出を行い、PHGDH遺伝子発現をリアルタイムPCRにて確認した。
young1-3:新生児、old1:91歳、old2:82歳、old3:54歳

PHGDH発現が低下している細胞ではET-1分泌量が亢進した

PHGDH発現が低下しているケラチノサイトに起こっている現象を解析するため、RNA干渉を用いてPHGDH発現低下細胞を作製した。72時間培養した上清を用いてメラノサイトを刺激する因子の一つであるET-1の分泌量を定量した結果、発現が低下していない細胞と比較して有意に分泌量が亢進していることが分かりました(図2)。その分泌量は紫外線(UVB)を照射した細胞から分泌されるET-1量と同等の分泌量であることも示されました。

図2 ケラチノサイト培養上清中のET-1量

<試験方法>
正常ヒトケラチノサイトにてRNA干渉を用いてPHGDH発現低下状態を作った。ネガティブコントロールsiRNAを添加した細胞にUVB照射を施すものと施さないものを用意し、PHGDH発現低下状態にした細胞と比較を行った。UVB照射後72時間の培養上清に含まれるET-1分泌量はELISA法にて定量した。
(n=3, Student t-test p<0.001 ***)

PHGDH発現低下により亢進したET-1分泌をδトコフェロールが抑制させた

PHGDH発現低下により亢進したET-1分泌を抑制することでメラノサイトへの刺激を正常化することを目指し検討を行った。ET-1分泌を抑制する成分の探索を行った所、δ-トコフェロールに有意なET-1分泌抑制作用を見出しました。

図3 δ-トコフェロールがET-1分泌量に与える影響

<試験方法>
PHGDH発現低下状態にした正常ヒトケラチノサイトを培養し、δトコフェロールを添加した。添加後72時間の培養上清に含まれるET-1分泌量をELISA法にて定量した。
(n=3, Student t-test vs PHGDH (-)、δ-トコフェロール0 mg/ml p<0.05*, p<0.001 ***)

今後の展望

老齢由来ケラチノサイトを用いた研究により、PHGDH発現が低下し、それによりメラノサイトへ作用してメラニン産生を促進する因子であるET-1分泌が亢進されることを確認しました。また、分泌が亢進したET-1量をδ-トコフェロールが抑制することが明らかとなりました。
本研究成果から、δ-トコフェロールはケラチノサイトに働きかけ、メラニン合成を抑制する作用が期待されます。今後も、皮膚の抗加齢研究を通じて美と健康の増進に貢献していきます。

用語説明

※1:PHGDH遺伝子
D-3-ホスホグリセリン酸デヒドロゲナーゼ(D-3-phosphoglycerate dehydrogenase)をコードする遺伝子。アミノ酸の1つであるセリンの合成に関与することが知られている。

※2:エンドセリン-1(ET-1)
エンドセリン受容体に結合し、血流や細胞増殖を制御することが知られている。またメラノサイトにおいて発現しているエンドセリン受容体に作用し、メラニン合成を促進することが知られている。

※3:δ-トコフェロール
脂溶性の抗酸化物質であるビタミンEの一種。