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防風通聖散に「糖(フルクトース)の吸収抑制作用」を確認!

研究開発

防風通聖散に「糖(フルクトース)の吸収抑制作用」を確認! ~名古屋市立大学との共同研究成果~

2023年4月21日

ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:杉本雅史)は、統合経営ビジョン2030「Connect for Well-being」の実現に向け、漢方薬の作用について研究開発を推進しています。漢方方剤の1つである「防風通聖散」は18種の生薬からなり、肥満症などに効果のある漢方薬として使用されています。今回、防風通聖散の糖の吸収に対する作用に関して、名古屋市立大学大学院薬学研究科 牧野利明教授との共同研究を行い、防風通聖散に糖の1種であるフルクトースの吸収を抑制する作用があることを確認しました(Journal of Natural Medicines掲載)。今後、よりよい品質の漢方薬の開発に応用し、ウェルビーイングな社会実現につながる成果を積み重ねていきます(本研究成果は特許出願中です)。

研究結果サマリー

  1. 防風通聖散にフルクトースの吸収を抑制する作用があることが示唆された
  2. 防風通聖散を構成する生薬の一つ「ダイオウ」がフルクトースの吸収抑制作用に寄与する可能性を確認した

研究の背景

肥満症は様々な病気を引き起こす因子として知られており、運動療法や食事療法、薬による治療など肥満症の改善は様々な対処法が存在します。
食事より摂取される必要なエネルギー源の一つである糖質は、単糖のグルコースやフルクトースなどから構成され、摂り過ぎるとエネルギーとして消費されずに体に脂肪として蓄積されてしまい肥満症の原因となると考えられています。
防風通聖散は交感神経に働きかけるマオウや、脂肪代謝経路に働くカンゾウ・ケイガイ・レンギョウ、溜まった老廃物の排泄に働くダイオウなど、18種類の生薬からなる漢方薬で、肥満症などに使用されており、近年、糖に対するメカニズム研究に注目が集まっています。
そこで、今回防風通聖散の肥満症に効果を示すメカニズムの研究として、漢方薬学をテーマに漢方薬の薬理作用に関する研究を進めている名古屋市立大学 牧野教授と共同で研究を行うこととしました。

結果

1. 防風通聖散にフルクトースの吸収を抑制する作用があることが示唆された

防風通聖散の有無により、フルクトースを投与した際の血中濃度の変化に差が見られるかどうかを確認しました。その結果、防風通聖散を事前に投与された試験群では、投与後30、60、120分において有意に血中フルクトース濃度が低くなることが確認されました(図1)。これらのことから、防風通聖散には、フルクトースの吸収を抑制する作用があることが示唆されました。

図1:防風通聖散の有無による血中フルクトース濃度の経時変化

<試験方法>
防風通聖散として18種類の生薬の混合物を熱水抽出し、調製した。投与については下記条件で防風通聖散調製物および、注射用水、フルクトースを投与した。採血については、投与前、2回目投与後、30分、60分、90分、120分、240分後に採血し、血漿中フルクトース濃度を測定した(n=3-4)(ロート製薬研究所実施)。

1回目投与 2回目投与
対照群 注射用水 フルクトース(2,000mg/kg)
試験群 防風通聖散調製物(2,500mg/kg) フルクトース(2,000mg/kg)

2. 防風通聖散を構成する生薬の一つ「ダイオウ」がフルクトースの吸収抑制作用に寄与する可能性を確認した

防風通聖散に含まれる18種類の生薬の中で、フルクトースの吸収抑制に寄与する可能性のあるエキスを検討すべく、エキス群、特定の生薬グループを除いたA、BまたはCエキスを投与した後にフルクトースを投与し、30分後の血液中フルクトース濃度を測定したところ、清熱作用を有する生薬を除いたAエキスのグループで、防風通聖散エキスの作用が消失する結果が確認されました(図2)。この結果から、防風通聖散の有効性には、清熱作用をもつグループの寄与が示唆されました。さらに、清熱作用を有する生薬(オウゴン、ダイオウ、サンシシ、セッコウ、ボウショウ、カッセキ)について同様にそれぞれの血中フルクトース濃度を測定した結果、ダイオウを含む組み合わせおよびダイオウのみのエキスにフルクトースの吸収を抑制する作用を見出しました(図3)。

  • 図2:防風通聖散およびその構成生薬を作用で分類し、組み合わせについてのフルクトース濃度の検討

  • 図3:清熱作用を有する生薬の組み合わせについてのフルクトース濃度の検討血中フルクトース濃度の経時変化

<試験方法>
防風通聖散エキスおよびその構成生薬の一部を除いて抽出を行ったエキスを投与した後、フルクトース溶液を投与し、投与30分後に門脈血を回収。対照群および各生薬エキスを投与した際の血液中のフルクトース濃度について測定し比較を行った(研究実施機関:ロート製薬)。なお、A,B,C各エキスは各生薬から抽出される量が、BTS 2500mg/kgに相当する量になるように計算し、投与量はそれぞれ、防風通聖散エキス:2,500mg/kg、Aエキス:1,560mg/kg、Bエキス:2,280mg/kg、Cエキス:1,840mg/kg。(n=6)(ロート製薬研究所実施)
Aエキス:ハッカ、ボウフウ、ケイガイ、マオウ、センキュウ、レンギョウ、キキョウ、トウキ、シャクヤク、ビャクジュツ、カンゾウ、ショウキョウ
Bエキス:セッコウ、サンシシ、オウゴン、ダイオウ、ボウショウ、カッセキ、キキョウ、トウキ、シャクヤク、ビャクジュツ、カンゾウ、ショウキョウ
Cエキス:セッコウ、サンシシ、オウゴン、ダイオウ、ボウショウ、カッセキ、ハッカ、ボウフウ、ケイガイ、マオウ、センキュウ、レンギョウ

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

本研究により防風通聖散の生薬ごとの重要性・役割や、成分について研究を重ねることで、よりよい品質の漢方薬の開発への応用が期待され、お客様に確かな効果実感いただけるよう、ウェルビーイングな社会実現に繋がる成果を積み重ねていきます。また今後も名古屋市立大学との協働を通して新たな漢方薬の評価を進め、製品の品質の向上およびお客様の満足の一助になればと考えています。

特記事項

本研究は、名古屋市立大学大学院薬学研究科 牧野 利明教授の協力を得て行われました。