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女性のニオイ変化に新知見。「プレラクトン™」は肌の上で若い頃の甘いニオイ「ラクトン」に変化する

研究開発

女性のニオイ変化に新知見 「プレラクトン™※1」は肌の上で若い頃の甘いニオイ「ラクトン※2」に変化する ~「プレラクトン™」の新たな反応条件の発見と有用性の確認~

2023年11月8日

ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:杉本雅史)は、加齢に伴う女性の体臭変化について研究を重ねるなかで、若い女性特有の香り成分である「ラクトン」の前駆体である「プレラクトン」が肌の上で「ラクトン」に変化することを発見しました。さらにラクトンとプレラクトンを併用することで香りの効果が長時間持続することを確認いたしました。引き続き、加齢に伴う体臭変化に関する研究に取り組むと同時に、製品開発へ応用していきます。

研究成果のポイント

  • 無臭の「プレラクトン」は皮脂や汗に含まれる成分によって若い女性特有の甘い香りである「ラクトン」に変化した
  • プレラクトンは人の肌の上でもラクトンに変化した
  • プレラクトンは時間の経過とともにラクトンに変化し、その後も継続的に甘い香りを発し続けた
  • プレラクトンとラクトンを併用すると長時間甘い香りを維持することができた

研究の背景

近年、体臭に対する意識が高まり、体臭対策のために香料が配合された化粧品が広く使用されています。当社では女性の体臭に含まれる、ピーチの様な香りやココナッツの様な甘い香りを放つ香り成分「ラクトン」が年齢と共に減少していることを発見し、女性の年齢による体臭変化にはラクトンが関わっていることを明らかにしました。しかしこれらの香料は塗布した直後に効果を一番発揮し、時間とともに効果が薄れます。
そこで今回の研究はラクトンの香りの効果を長時間持続させることを目指し、ラクトンとして甘い香りを放つ前段階であるラクトンの前駆体※3で無臭の物質、「プレラクトン」に着目しました。そして無臭のプレラクトンが若い女性特有の甘い香りであるラクトンに変化するための新たな条件について検討を行いました。また、プレラクトンの効果や有用性についても検討しました。

結果

(1)皮脂や汗の成分によって無臭のプレラクトンが若い女性特有の甘い香りラクトンに変化することを発見した

プレラクトンがラクトンに変化する条件を調べたところ、皮脂や汗のニオイ成分である酢酸やイソ酪酸、皮脂分解酵素として知られているリパーゼなど、人の肌に存在しうる条件において変化することを明らかになりました。

図1:各条件でのラクトン発生量

【試験方法】
プレラクトン0.01g及び試験サンプル0.1gをバイアル瓶に入れ、発生したラクトン量をGC/MSによって測定した。(n=1)(外部試験機関にて実施)

(2)プレラクトンは人の肌の上でラクトンに変化した

人の肌に存在しうる条件でプレラクトンがラクトンに反応することが明らかになったため、実際に人の肌の上でもプレラクトンがラクトンに変化するのかを確認しました。プレラクトンは時間の経過と共にラクトンに変化をすることを発見し、塗った直後よりも60分~90分後などの時間の経過と共に、発生量が増えていることが明らかになりました。

図2:皮膚上での経時的なラクトン発生量

【試験方法】
大腿部に枠を取り、1.0%プレラクトン水溶液、精製水(コントロール)を40µL塗布した。PFS法を用いて塗布部位から発生する気体を捕集し、含まれるラクトン量をGC/MSによって測定した。各時間のデータからコントロールの値を差し引き、また、差を取って30分ごとのラクトン量を算出した。(n=7, *:p<0.05, ウィルコクソンの符号付順位検定)(外部試験機関にて実施)

(3)プレラクトンは時間と共にラクトンに変化し、甘い香りを発生し続けた

肌の上でプレラクトンがラクトンに変化することが分かったため、変化した後のラクトンの量が時間と共にどのように変わっていくのか評価したところ、プレラクトン塗布直後から時間と共にラクトン発生量が増加しました。またラクトンへの変化は維持され、24時間後も甘い香りを放つことが分かりました。

図3:皮膚上モデル綿布上でのラクトン発生量

【試験方法】
皮膚上モデル綿布に1.0%プレラクトン液500µLを添加した、一定時間放置後、綿布をバイアル瓶に入れ発生したラクトン量をGC/MSによって測定した。(n=3)(ロート製薬研究所実施)

(4)プレラクトンとラクトンを合わせると若い女性特有のラクトンの甘い香りが長時間持続した

プレラクトンとラクトンを併用した場合の有用性について評価を行ったところ、ラクトンの香りが減少した頃に時間差でプレラクトンがラクトンに変化し、ラクトンの香りの効果を長時間持続できることが明らかになりました。

図4:ラクトン、プレラクトン併用の有用性評価

【試験方法】
皮膚上モデル綿布に0.1%ラクトン液500µL、もしくは0.2%プレラクトンと0.1%ラクトンを含んだ液500µLを添加した、一定時間放置後、綿布をバイアル瓶に入れ発生したラクトン量をGC/MSによって測定した。(n=3)(ロート製薬研究所実施)

考察および今後の展望

本研究により、ラクトンの前駆体である無臭のプレラクトンは肌の上で甘い香りのラクトンへ変化することが示唆されました。また他の香料と同様に従来のラクトン単体では時間の経過と共に香料の効果の減少が見られましたが、プレラクトンを併用することで、ラクトンの発生が持続的となり、長時間効果の持続が見られました。これらの結果より、時間の経過を気にせずケアをしたい、などの体臭悩みへのより効果的なアプローチが可能になると考えています。なお、本研究成果は、2023年9月11日~13日に行われた「日本味と匂学会第57回大会」にて発表し、優秀発表賞を受賞いたしました。

成分名注釈

※1:プレラクトン…4-ヒドロキシウンデカン酸Naのこと

※2:ラクトン…γ-ウンデカラクトンのこと

※3:前駆体…ある化学物質についてその物質が生成する前の段階の物質のことを指します。