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ヒオウギエキスの紫外線によるシミ発生抑制作用を発見

研究開発

ヒオウギエキスの紫外線によるシミ発生抑制作用を発見 紫外線による肌への影響に関するメカニズム研究成果

2023年11月15日

ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:杉本雅史)は、お客様が日々浴び続ける紫外線による肌への影響について、研究を行っています。紫外線による日やけはもちろん、シミやソバカス、シワの原因となることが知られており、今回シミ形成のメカニズムに着目したところ、ヒオウギエキスは発生した活性酸素種(以下、ROS)※1を消去する力が高いこと、また紫外線ダメージにより発現が高まるエンドセリン-1※2およびプロスタグランジンE2※3を抑制することを発見しました。ヒオウギエキスには、紫外線によるシミ発生を抑制する作用を持つ可能性が示唆されました。
今後も、お客様の健やかな肌を維持することに貢献できるよう、紫外線による肌への影響についてメカニズムに注力した研究を進めてまいります。

研究成果のポイント

  • ヒオウギエキスには活性酸素種(ROS)※1を消去する力が高いことが明らかとなった
  • ヒオウギエキスには、紫外線(UVB)によるダメージで発現が高くなるエンドセリン-1※2およびプロスタグランジンE2※3を抑制することを発見
  • ヒオウギエキスがROS抑制作用と併せてUVBダメージによるシミ発生抑制作用があることを同時に発見

研究の背景

図1:シミのメカニズムと今回のアプローチ

私たちが毎日浴びている太陽の光は、肌へ悪影響を与える紫外線が含まれており、日やけはもちろん、シミやソバカス、しわの原因となっています。それを防ぐためには、日常的に紫外線へのケアが必要であり、日焼け止めと合わせてさらなるエイジング対策が求められています。
今回の研究で私たちはシミ形成のメカニズムに着目し、酸化ストレスにより発生したROSを消去する力が高い成分の探索を行いました。また、同時に、紫外線(UVB)によるダメージで発現が高くなるエンドセリン-1とプロスタグランジンE2を抑制する成分の探索を試みました。
抗炎症作用の期待される植物エキスを選定し、特に紫外線によって引き起こされる細胞ダメージへの作用を検証しました。

結果

(1)ヒト表皮角化細胞において、ヒオウギエキスがROSを抑制することを確認した

紫外線を浴びることによって増加することが知られているROSを指標に、ヒト表皮角化細胞において素材スクリーニングを行いました。細胞内で活性酸素種を発生させ、その状態からこれら素材が活性酸素種を消去させるか確認しました。
その結果、ヒオウギエキスが活性酸素種を消去することへ働き、抑制することがわかりました。

図1:ヒト表皮角化細胞内のROS測定結果

<試験方法>
正常ヒト表皮角化細胞を培養してヒオウギエキスを添加した30分後に、活性酸素種発生薬剤とヒオウギエキスを添加した。その後、活性酸素種に反応する染色試薬で染色された表皮角化細胞の画像をイメージングシステムにて撮影し、輝度の差で評価した。
(n=3, *p<0.05, ***p<0.001 Dunnett's test: v.s. コントロール)
(ロート研究所実施)

(2)UVBダメージで上昇するエンドセリン-1の産生をヒオウギエキスが抑制することを確認

エンドセリン-1はヒト表皮角化細胞から産生されるサイトカインの一つで、紫外線の影響によっても作り出され、その後メラノサイトを刺激し、チロシナーゼを活性化させてメラニン産生を促進します。今回、紫外線(UVB)を照射することによって上昇したエンドセリン-1を抑制する素材のスクリーニングを行った結果、ヒオウギエキスが抑制することがわかりました。

図2:ヒト表皮角化細胞培養上清中のエンドセリン-1量

<試験方法>
正常ヒト表皮角化細胞にヒオウギエキスを添加して培養し、UVB照射によりダメージを与えた。その72時間後の培養上清に含まれるエンドセリン-1分泌量をELISA法にて定量した。
(n=3, ###p<0.001, Student's t-test)(n=3, **p<0.01, ***p<0.001 Dunnett's test: v.s. UVB ありヒオウギエキスなし)
(ロート研究所実施)

(3)UVBダメージで上昇するプロスタグランジンE2の産生をヒオウギエキスが抑制することを確認

プロスタグランジンE2はヒト表皮角化細胞から分泌され、チロシナーゼの活性を高めてメラニン産生を促進します。今回、紫外線(UVB)を照射することによって上昇したプロスタグランジンE2を抑制する素材のスクリーニングを行った結果、ヒオウギエキスが抑制することがわかりました。

図3.ヒト表皮角化細胞培養上清中のプロスタグランジンE2量

<試験方法>
正常ヒト表皮角化細胞にヒオウギエキスを添加して培養し、UVB照射によりダメージを与えた。その24時間後の培養上清に含まれるプロスタグランジンE2分泌量をELISA法にて定量した。
(n=3, ###p<0.001, Student's t-test)(n=3, *p<0.05, ***p<0.001, Dunnett's test: v.s. UVB ありヒオウギエキスなし)
(ロート研究所実施)

考察および今後の展望

本研究成果により、ヒオウギエキスが、紫外線(UVB)を浴びることで発生した活性酸素種を増やさないように働き、さらに、紫外線を浴びたことで表皮からメラノサイトへ刺激が与えられてシミ発生に関連する因子であるエンドセリン-1とプロスタグランジンE2の発現を抑制することで、日焼けによるシミ発生を抑えることに期待できる結果を得ることができました。また、本研究では、紫外線ダメージを与える前からヒオウギエキスを処理し、ダメージ後にも同エキスを処理したサンプルで上記2因子を抑制したことから、紫外線を浴びる前から表皮の耐紫外線力を上げ、浴びた後も炎症を抑制する作用を確認しました。これらの結果が、日常のUV対策に関して新たな付加価値に繋がることが期待されます。
ロート製薬は、今後もお客様の健やかな肌を維持することに貢献できるよう、デイリースキンケアに繋がる研究を続けてまいります。

用語説明

※1:活性酸素種(ROS: reactive oxygen species)
活性酸素種とは,酸素分子が反応性の高い化合物に変化したものの総称です。呼吸により体内に取り込まれた酸素の一部が通常よりも活性化され、活性酸素種へと変化すると考えられています。そこには、紫外線も直接的、間接的にも影響を与えています。活性酸素種は、細胞内の様々なシグナル伝達経路を活性化させ、体内の代謝過程において様々な成分と反応し、過剰になると細胞傷害を引き起こします。

※2:エンドセリン-1
血管内皮細胞から産生される血管収縮作用があるペプチド。エンドセリン受容体に結合し、血流や細胞増殖を制御することが知られています。また、メラノサイトにおいて発現しているエンドセリン受容体に作用し、メラニン合成を促進することが知られています。

※3:プロスタグランジンE2
紫外線ダメージによってヒト表皮角化細胞から産生され、メラノサイトへ炎症を伝達する物質です。この影響を受け、チロシナーゼ活性が高まり、シミ生成が促進することが知られています。