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お客様が感じる「好き」を数値で解き明かす - 極潤ヒアルロン液が好まれる理由の一端を初めて解明

研究開発

お客様が感じる「好き」を数値で解き明かす ―脳波・脳血流・心拍数測定で極潤ヒアルロン液が好まれる理由の一端を初めて解明―

2024年9月26日

ロート製薬株式会社(本社:大阪市、社長:杉本雅史)は、ロートグループ 総合経営ビジョン 2030である「Connect for Well-being」の実現に向け、徹底したお客様起点の考え方に基づいた研究開発を行い、製品を長く愛用していただけるようにお客様視点にこだわった感性評価研究をすすめています。今回、今年で20周年を迎える肌ラボシリーズの中で、独特な使い心地が特徴である極潤ヒアルロン液※1の使い心地の感性評価を行ったところ、極潤ヒアルロン液の使い心地が好きな人とそうでない人の間には、塗布行動中の脳波・脳血流・心拍数に特徴的な違いがあることが初めて明らかになりました。これは、通常の使い心地アンケートでは聴取できない潜在的な感性を表現しており、お客様の満足度に直結する「使い心地」をより深堀り・向上させていくための重要な発見となりました。

※1:極潤®ヒアルロン液(販売名:ハダラボモイスト化粧水d)

ニュースレターのポイント

  • ヒアルロン酸にこだわった化粧水である極潤ヒアルロン液の使い心地を、塗布行動中の3つの生理指標(脳波・脳血流・心拍)の測定によって初めて数値化した。
  • 塗布後のアンケート評価と塗布行動中の生理指標測定では得られる情報が異なり、生理指標測定により「好きな使い心地」などのお客様の感性を評価することができる可能性が見出された。
  • お客様視点の感性評価はお客様の満足度につながり、製品価値の向上に寄与すると考えている。

極潤ヒアルロン液のヒアルロン酸へのこだわりと、20年間選ばれてきた理由を考える

ヒアルロン酸は1gで6Lの水を抱え込み、人の眼や身体にも存在する高い保水力が特長の成分です。20年前、当社は目の研究から着想を得て、ヒアルロン酸のスキンケアにおける可能性に着目しました。そのヒアルロン酸を「肌にも良いに違いない!化粧水にできるだけたくさん入れたい!」という1人の研究員の非常にシンプルな想いから、極潤ヒアルロン液は誕生しました。しかし、ヒアルロン酸はその優れた保水力により、大量に配合すると独特のとろみが生じます。極潤ヒアルロン液が誕生した当時、とろみの強い化粧水はほとんどなく、当時の「良い使い心地」の定石からすると常識外れともいえるものでした。それでも、肌に大切なものだけをギュッと詰め込む「パーフェクトシンプル」にこだわり続けて処方を開発した結果、20年前の化粧品業界では珍しい、独特な使い心地の極潤ヒアルロン液が完成しました。そんな特徴ある極潤ヒアルロン液は発売から20年間多くのお客様にご愛用いただき、累計1億本以上※2をお届けしてきました。私たちは次の時代もこれまで以上にお客様に愛される商品をお届けしたいと考えています。そこで今回、なぜ20年もの間お客様にご愛用いただけてきたのか?秘密を解明すべく、極潤ヒアルロン液の感性評価を検討することとしました。

※2:ロート製薬出荷数量(2004年8月~2024年8月)

「塗布後」のアンケート評価で「好き」をひも解く

極潤ヒアルロン液が好きな群は「浸透感」と「もちもち感」を高評価

一般消費者20歳~60歳の女性に、極潤ヒアルロン液を使用後、使い心地について10項目の質問について評価してもらいました。使い心地が好きかどうかを評価してもらった結果から、使い心地が好きなグループ(以下、Positive群)と、そうでないグループ(以下、Not-Positive群)に分類し、この2群間で各評価項目の結果を比較しました。その結果、「とろみ」や「ベタツキ感」の評価に大きな差はない一方で、「浸透感」や「なじんだ後のもちもち感」についてはPositive群の方が高く評価していることが分かりました(図1)。さらに、すべての評価項目で主成分分析を行ったところ、極潤ヒアルロン液を好きかどうかは、「浸透感」と「なじんだ後のもちもち感」が決め手になっていることが分かりました(図2)。

図1:使い心地アンケートの評価結果(項目抜粋)

図2:使い心地アンケートの主成分分析結果

<試験方法>
20歳~60歳女性に自宅で極潤ヒアルロン液を4日間使用後、使い心地の各項目について5段階で評価してもらった。その結果をもとに、使い心地が好きな被験者(以降、Positive群)と、そうでない被験者(以降、Not-Positive群)を抽出し、スコア平均を算出した。さらにすべての項目について主成分分析し、「好み」に近いポジションの使い心地を、好みへの影響度が高い使い心地と判断した。(ロート製薬研究所で実施)

「塗布行動中」の脳波・脳血流・心拍数で「好き」をひも解く

極潤ヒアルロン液が好きな群は「塗布している間使い心地に集中」

化粧品の使い心地評価には通常アンケート評価が用いられますが、塗布後に回答するため、塗布行動中(実際に化粧品を肌に塗布している最中)の潜在的な感覚まで十分に掘り下げることができません。しかし、化粧品の継続使用につながるような実際の感情は「塗布行動中」に生まれているのではないかと仮説を立て、それを客観的に確認できる評価法を検討することにしました。様々な評価法を検討した結果、我々は極潤ヒアルロン液を塗布している最中(塗布行動中)の脳波・脳血流および心拍を測定することで、どんなことを潜在的に感じているのか評価できる可能性を見出しました。
今回の結果より、極潤ヒアルロン液の使い心地が好きなグループであるPositive群とそうでないNot-Positive群では、各生理指標において異なる変化傾向を示しました。特に、一般的にβ波が低いほど沈静状態を意味する脳波では、塗布行動開始直後にPositive群の方がより大きな低下傾向を示しました(図3-1)。また、数値が高いほど集中度が高いことを意味する脳血流量は、全体的にPositive群の方が高い変化を示しました(図3-2)。さらに、副交感神経の状態を示すHFは、数値が高いほど快感傾向を示しますが、極潤ヒアルロン液が肌になじんだ後にあたる試験後半に向かって特徴的な傾向がみられ、Positive群は上昇し、Not-Positive群は低下傾向を示しました(図3-3)。この結果から、極潤ヒアルロン液の使い心地が好きかどうかで脳波をはじめとした生理指標に異なる傾向が示され、特にPositive群は塗布している間沈静状態にありながらもその使い心地に集中し、極潤ヒアルロン液が肌になじんでいくにつれて心地よさを感じている可能性が示唆されました。

図3-1:脳波β/αの変化

図3-2:脳血流量の変化

図3-3:心拍HFの変化

<試験方法>
脳波計および心拍計を装着し安静にした後、1分間極潤ヒアルロン液を被験者自身で塗布し、安静時(塗布前)から塗布動作後(塗布後)までの測定を行った。動作による影響を除くために、塗布する真似の測定も同様に行った。
脳血流は別日に同じ被験者で同様の試験を行った。それぞれの群で実際に塗布した際のデータから塗布する真似をしただけの差分を取得し、塗布開始時を0としたときの変化量を計算しグラフに示した。また、特徴的と思われる箇所(★)の塗布開始前からの変化量の5秒間の平均値を棒グラフに示した。(ロート製薬研究所で実施)

極潤ヒアルロン液が好きな人は、ヒアルロン酸による使い心地を「味わっている」?

これまで、脳波や心拍などの生理指標を用いてお客様の潜在意識を評価する研究は数多く発表されてきましたが、今回の研究には従来とは異なる3つの特徴があります。それは、1. 多角的に考察するために数種類の生理指標を組み合わせ、2. 「塗布行動中」に測定を行い、さらに3. 専門パネラーではなく一般の被験者、つまりお客様に近い感覚で評価を行ったという点です。今回、一般の被験者の「塗布行動中」の複数の生理指標測定が実現できたことで、これまでの研究よりもお客様の使い心地に対する感覚に近い評価を行うことができ、極潤ヒアルロン液の好みによって塗布行動中に潜在的に感じるものが異なる可能性を見出すことができました。
生理指標の結果から、極潤ヒアルロン液が好きな人は、塗布しながらその使い心地に集中し、徐々に心地よさを感じている、つまり使い心地を「味わっている」という可能性が考えられました。まさに、極潤ヒアルロン液ならではの、塗布してから肌になじみ終わるまでの感触とそのあとの肌のもちもち感が心地よさにつながっていることが見出されました。これらは、従来行ってきた使い心地アンケートだけでは得られない、生理指標を用いたからこそ得られた新しい知見であり、今後もこの評価手法を用いて「使い心地」の解像度を高めていきたいと考えています。

今後の展望

今回の感性評価結果により、極潤ヒアルロン液を愛用してくださるお客様の「好き」の一部を解き明かすことができました。今回得られた知見は今後の極潤ヒアルロン液ならびに肌ラボブランド全体の処方開発・改良に活用していく予定です。この先20年、30年先まで極潤ヒアルロン液と肌ラボブランドが愛される存在であり続けるために、徹底的なお客様視点を第一に考え、今回の手法だけにとどまらず、お客様自身が気付かないような潜在的に感じている使い心地の研究を深め、よりお客様のウェルビーングに寄り添う製品開発を目指してまいります。