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IPL光治療による美白作用メカニズムの解明

2018年3月1日:第138回日本薬学会

【目的】近年美容医療の分野において、光治療の人気が高まっている。中でもIntense pulsed light (IPL)は、顔面の様々なエイジング症状に対して有効性が確認されている(Negishi et al., Dermatol. Surg., 2001)。しかしながら、その詳細な作用メカニズムは解明されていない。本検討ではIPLによる施術のうち、肌色改善に対する作用機序を明らかにすることを目的とした。

【方法】3次元培養皮膚(MEL-300A, MatTek社)に対し、フォトフェイシャル®M22(Luminas社)を実際の施術に則して照射を行った。照射6時間後のMEL-300AよりRNAを抽出し、GeneChip Human Gene 2.0 ST Array(Filgen社)を用いて遺伝子発現解析を行った。メラニン産生試験並びに素材探索はヒト正常メラノサイト(NHEM, クラボウ社)を用いて行った。

【結果・考察】IPL光治療を施したMEL-300Aの遺伝子発現を解析したところ、メラニン生合成に関わる遺伝子のうちDCT、OCA2、SLC45A2の発現がコントロールに対し発現が50%以下に低下した。OCA2、SLC45A2発現を抑制した状態のメラニン産生能を評価した結果、メラニン産生量が有意に低下した(n = 3, P < 0.05, Dunnett’s test)。次に両遺伝子の発現を抑制する素材の探索を行った結果、アーティチョークエキス、エイジツエキス、油溶性甘草エキスの添加によってOCA2の発現量が低下し、エイジツエキスの添加によってSLC45A2の発現が低下した。OCA2とSLC45A2の特定の遺伝子型はゲノムワイド関連解析により、皮膚色形成に重要な遺伝子であることが示唆されている(Sturm RA, Trends Genet., 2006)。本研究にて見出したエキスを配合した製品は美白製品として有用であると考えられる。