CFOメッセージ

2024年度の振り返り

取締役副社長 チーフファイナンシャルオフィサー(CFO)斉藤 雅也

取締役副社長 チーフファイナンシャルオフィサー(CFO)斉藤 雅也

2024年度は、持続的な企業価値の向上に向けて、戦略的かつアグレッシブな財務アプローチを遂行した一年となりました。
中長期的な成長基盤を力強く構築するため、事業ポートフォリオの戦略的な拡充とグローバル市場におけるプレゼンスの更なる向上を企図し、大型投資を積極的に実行しました。具体的には、アジア地域における事業基盤の強化と、「薬に頼らない製薬会社」というコンセプトのもと内服・食品事業を新たな成長の柱として確立することを目指したユーヤンサン社、ならびに欧州市場における医薬品・医療機器事業の拡大を図るモノ社の連結子会社化という二件の大型M&A投資を実施しました。加えて、アイケア、スキンケアなどのコア事業の競争優位性を強化するため、マザー工場である上野工場のリノベーションなど生産設備の増強を含む設備投資を計画的に推進しました。

2024年度の財務アプローチとしては、積極的な成長投資に必要な資金を財務の健全性を維持しつつ効率的に調達するため、2032年満期のユーロ円建転換社債型新株予約権付社債を発行しました。この資金は、ユーヤンサン社買収に関連する借入金の返済や資本効率向上等を目的とした自己株式の取得に充当するなど、当社の財務基盤の健全性と将来の更なる成長投資の原資確保に貢献しています。
また、株主還元につきましては、安定的かつ継続的な還元方針に基づき、年間配当は前期から9円増配の36円としました。他方、政策保有株式につきましても、その意義を個別に精査し、縮減を進めており、資本コストの低減に努めました。

中長期成長戦略

2025年5月に当社として初めて中長期成長戦略を発表しました。「ロートグループ総合経営ビジョン2030」で目指す、健康で幸せに過ごすことができる持続可能な社会の実現のための具体的な戦略と、10年先(2035年)を見据えたマイルストーンを示すものです。
3年後の2027年度に売上高3,650億円、営業利益460億円、6年後の2030年度には売上高4,150億円、営業利益540億円の達成を見込んでいます。引き続き、将来への成長投資・基盤投資を積極的に行い、長期的な成長基盤の強化を推進します。
一方で、レジリエントな収益力を発揮して、営業利益率12%以上、EBITDAマージンは2024年度の16.9%から年々向上させ、2030年には18%以上を見込みます。効率性の面ではROE10%以上を確保し、「健全な財務体質」「成長投資」「株主還元向上」の同時実現を進めていきます。

キャッシュ・アロケーションにおいては、コア事業を中心に創出したキャッシュを成長投資と株主還元に戦略的に配分する方針です。
成長投資は、アイケア、スキンケア、内服・食品といった既存コア事業の継続的な強化に加え、医療用眼科領域、再生医療関連技術、それらの独自開発力を活かしたCDMO(開発製財務戦略造受託)やグローバル市場拡大に向けた投資を行います。具体的には、革新的な技術・サイエンス創出のための研究開発、需要拡大に対応するための生産・供給体制強化に向けた設備投資、全社的な生産性向上を目的としたDX/IT投資、そして事業ポートフォリオの拡充や新規グローバル市場開拓を目的としたM&Aを戦略的に実行し、持続的な成長ドライバーを育成してまいります。これらの投資は、人的資本やサステナビリティ関連などの非財務資本の強化と連動し、中長期的な成長とキャッシュ創出力の向上につながるものと考えています。

中長期ビジョンの達成に向けた当社の成長戦略は、財務戦略と非財務戦略が一体となって推進されるべきものです。単に財務数値目標を追うのではなく、サステナビリティ、コーポレート・ガバナンス、多様な人財育成といった非財務資本の強化を通じて、価値創造の実現を目指しています。
事業の投資判断は、市場環境の変化や財務価値に加えて、サステナビリティ、顧客ロイヤリティといった非財務価値を勘案しながら、化粧品2~3年、一般用医薬品3~5年、医療用医薬品10~15年、食品2~10年、細胞治療10~20年、CDMO3~5年程度をそれぞれの事業サイクルと捉え、当社の持続的な成長と企業価値の向上につながることを基準に判断します。

株主還元につきましては、長期視点での安定的かつ継続的な還元を重視して、利益成長に応じた配当を継続し、株主の皆様への還元充実に努めていきます。業績の状況や事業環境の変化、そして中長期的な成長投資とのバランスを考慮しつつ、連結配当性向30.0%以上及びDOE(株主資本配当率)3.5%以上を目安として、安定して累進拡充していく方針です。自己株取得については、資本構成適正化に加え、投資案件や市場での当社評価の状況等を総合的に勘案して検討・実施することとします。
また、株主や投資家をはじめとするステークホルダーとの信頼関係構築のため、CFOである私とIR担当を中心に多様な形式での対話を継続的に実施し、適切な情報開示と相互理解の深化を通じて、資本コストの低減と企業価値向上につなげていきます。

ロート製薬株式会社 取締役副社長
チーフファイナンシャルオフィサー(CFO)
斉藤 雅也